芸能

映画『るろうに剣心』衝撃の血しぶきシーンはどう作られたか

時代劇史上でも屈指なほどに美しいシーンはどう作られたのか

時代劇史上でも屈指なほどに美しいシーンはどう作られたのか

 近年に大ヒットした映画やテレビドラマには、実は重要な役割を果たしているディテールがある。本連載では、それを創ったスタッフの方に製作の裏側をうかがい、彼らの「技」を掘り下げていく(本稿は作品終盤の展開に関して明らかにしている内容が含まれています)。

 最初に取り上げるのは、2021年に公開された映画『るろうに剣心 最終章The Beginning』(大友啓史監督)の「血しぶき」。本作のアクション――特にラストの雪の中での決闘における血の表現は時代劇史上でも屈指なほどに美しく、「激しさ」ばかりを重視しがちだったそれまでの同シリーズと明らかに一線を画すものがあった。

 中でも剣心(佐藤健)が巴(有村架純)を斬った際に巴から舞い上がる血は、悲劇の結末を彩る悲壮美に満ちていた。

 人気のシリーズの最後を見事に締めくくっていたこの「血しぶき」を創ったのは、VFXディレクターの白石哲也氏をはじめとするCGチームの手によるものである。

 * * *
白石:公開が延期になったことで、「そういう時間はあるなら、もっといろいろやっちゃおう」と、あのシーンを追求する時間もできたんです。

 そこでまずこだわったのは、巴から最初に血が出るところです。鮮烈に見せたかったので、「破裂する血」みたいな表現を多めに入れています。

――まず血の出方によって観る側をハッと驚かせるわけですね。

白石:剣心が巴を斬ったという衝撃的なシーンですから、血でもその衝撃を表現したかった。リアリティはもちろん重視していましたが、ここは鮮烈さが大事だと思いまして……。

――たしかに、それによって「取り返しのつかないことになった」という状況がビジュアルとしてハッキリと伝わってきます。

白石:剣心は死ぬ想いでその一撃を繰り出して、その一撃を巴が受け、もう助かる見込みがないほどに血が出てしまった。あの場面は、そこまで持っていかなきゃいけなかったんです。

――そこでハッとさせておいて、今度は静かに死に向かっていきます。空中を血が舞い、雪の上を血が流れる。「これぞ時代劇」というべき美しさでした。

白石:破裂するように飛び出した血が引きの画になった時に細かく散っていくことで、「血の涙」といいますか、そういう見せ方をしたかったんです。ふわーっと儚げに散って、雪の中に染み込んでいく……みたいな。

 ここはそもそもの画も綺麗でしたので、この構図を邪魔しないように繊細に血を入れていこうという想いがありました。

関連記事

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン