●和田はつ子『天下一の粥 料理人季蔵捕物控』(ハルキ文庫)の第3話「為朝丼」より
烏谷は梅風味雑穀飯と
鮪の塩揚げ丼を引き寄せると、
急いで箸を使い、
「うーん、脂たっぷりの鮪と
雑穀飯がこれほど合うとはな。
これらの出会いは他に類のない
複雑な美味さよ。
雑穀飯、侮るべからずだ。
鮪は言うに及ばず、
雑穀も米とは比べようもないほど
安価なゆえ、流行風邪の蔓延が
長引くことを考え合わせると、
雑穀飯と鮪の漬け焼き丼、
梅風味雑穀飯と鮪の塩揚げ丼は、
皆の財布に優しい持ち帰りの
菜となるだろう」
【作品紹介】
2021年12月に42巻が刊行されたベストセラーシリーズ。かつては武士だった、日本橋の一膳飯屋「塩梅屋(あんばいや)」の料理人・季蔵が、北町奉行の特命を受けて仕事人としてさまざまな事件に立ち向かう。季蔵が工夫を凝らして考案する料理から四季の楽しみを味わえる。
【梅風味雑穀飯と鮪の塩揚げ丼】
冷凍冷蔵技術がなかった江戸時代、魚河岸に運ばれるまでに傷み始める鮪は「猫またぎ」とも呼ばれ、「下魚(げざかな)」として扱われた。特に身が崩れやすい大トロは肥料にされていた。
〈材料〉2人分
鮪のさく…約300g、塩…少々、こしょう…少々、小麦粉…大さじ3、ごま油…適量、雑穀米…2合、梅干し…2粒
〈下準備〉
*雑穀米を炊いておく(写真は16穀米を使用)。
*梅干しは叩いておく。
〈作り方〉
(1)鮪のさくに塩を振り10分置く。
(2)(1)を熱湯で湯どおしをし、塩・こしょうを振り下味をつける。
(3)(2)に小麦粉をまぶし、ごま油で炒め焼きにする。
(4)炊き上がった雑穀米に梅干しを和え、器に盛り、(3)を一口大に切りのせる。
レシピは、『料理人季蔵捕物控 天下一の粥』(ハルキ文庫)を元に本誌・週刊ポストで考案した。
撮影/矢野宗利 フードスタイリスト/品川淑恵
※週刊ポスト2022年2月18・25日号