2021年10月1日、中華人民共和国72周年を祝う行列に参加する女の子。マスクには「私は中国を愛します」と書かれている(AFP=時事)
日本の店でも中国資本というのは最近の傾向、人気の韓国系コスメショップも韓国人でなく中国資本だったりする。豊島区の飲食店主に聞くと、このような感想もあった。
「どうやって利益出してんだろって思うくらい安いんだ。どれも500円とか、凄いとこはその金額でバイキングの食べ放題だよ」
日本国内でいったいどうやって稼いでいるのか、別に稼ぎがあるのか、先入観抜きにどこか変なのだ。先の古くからの在日中国人が不思議がるのも無理はない。
「コロナでどんどん増えてるね。都心は協力金もらったってペイできないとこばかりだから、日本人には厳しいよ」
それにしても、まるで何かの号令があったかのように短期間で増えたように思う。他国でも中国資本のこうした激安飲食店は多いのだが、コロナ禍の自粛と人命重視に疲弊し続ける日本をよそに、中国はさらに世界を席巻するべく攻勢をかけ続けた。おかげで貿易では買い勝ち、アメリカと肩を並べるどころか凌ぐ国力で太平洋の支配を確立しようとしている。謎の中国料理店の増殖という小さな話に思うかもしれないが、小さな事すら全力なのが中国という大国であることはこれまでの事案の数々が証明している。「こんなことまで国がするのか」というのが中国だ。一連のカジノなどの統合型リゾートに関する事件でもその「きめ細やかな」手口とそれに籠絡される日本側の実体があぶり出されたことは記憶に新しい。
「でも貸さないわけにもいかないしね、土地だってそうだけど、欲しい人は金さえ出せば誰でも借りられるし買えるのが日本だからさ。コロナでテナント、厳しいからね」
中国人は固定資産税を払いたくないので日本の土地を永続的に持つなんて不合理なことはしたくない。その代わり中国国内のインターネットで日本の土地を短期間に売買している。都心の異常な値上がりは中国国内における日本の土地売買にも起因するのだが、日本に行ったこともない、現地を見てもいない中国人が投機目的で日本の土地をゲームよろしく売買している。中国の名門大学の学生や若手IT経営者などはそれこそゲーム感覚で日本の土地を売り買いしている。
「日本人は北京や上海の土地でそれできないからね」
条件や面積にもよるができる国のほうが少ない。許しているのは日本政府だ。日本人は中国の土地は買えない。借りるのすら規制が厳しく面倒だ。不条理だが中国のほうが世界的には当たり前の対応である。国際常識からすれば日本のほうが「間抜け」呼ばわりである。
「政府が許してるんだから仕方ない。もうかなわないよね、お金もってるし。日本もコロナ気にせず経済まわしてりゃね」
人命の問題なので致し方ないとはいえ一理ある。もちろん本稿は中国や在留中国人の方を過度に煽るためのものではない。ただ人権意識が高い国のほうが損、という昨今、それにつけこまれることも事実である。目に見えて新たな中国コミュニティが形成され、これまでと違う資本や意図も含めた正体不明の影が見え隠れする。もはや世界の超大国である中国、3兆円以上のODAを止めた2018年の時と同様に、日本の安全保障という点でもこれまでのつきあい方を考え直す機会が訪れている。ちょうど2022年で日中国交正常化50周年、対等な大国として守るべきものは守り、日本も毅然と対峙することこそ共生に繋がる。そのほうが日本で商売をしたい「だけ」の中国人にとっても安心のはずだ。
中国は日本の土地どころかあらゆるものを金で買える、借りられるのに、日本は中国の土地を買えない、借りるにも規制まみれというのは不平等条約のようなものだと思う。2021年、ようやく外資の土地取引規制法が成立したが極めて特殊な場所だけに限定したザル法である。共生とは対等であるからこそ成り立つと考える。ゆずること、おもねることを共生とは言わない。コロナ禍に疲弊する日本の小売りに替わって増殖する新たな中国資本の店舗、中華料理店はその一例だが、さらに加速するであろうその勢い、注視していく必要があるように思う。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)ジャーナリスト、著述家、俳人。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題やと生命の倫理の他、日本の「食の安全保障」などロジスティクスに関するルポルタージュも手掛ける。