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『大怪獣のあとしまつ』は怪獣への固定観念をひっくり返す傑作

大人な表情も見せる

『大怪獣のあとしまつ』には土屋太鳳も出演

 Hey! Say! JUMPの山田涼介が主演する映画『大怪獣のあとしまつ』。7日発表の週末興行ランキングで1位を獲得するなど話題を呼んでいる。この作品の見どころについてコラムニストのペリー荻野さん独自の視点で解説する。

 * * *
 公開中の映画『大怪獣のあとしまつ』。主演の山田涼介が「三木聡監督ワールド全開」と語るように、ゆるい空気で人気を集めた『時効警察』シリーズや映画『亀は意外と速く泳ぐ』『俺俺』などで知られる三木聡脚本・監督が生み出す独特の面白さがあふれた“空想特撮エンターテイメント”である。

 物語は、人類を苦しめた大怪獣が、突如現れた光エネルギーにより、日本国内で絶命したことから始まる。巨大な死体をどうするか。その責任者に選ばれたのは、特務隊の帯刀アラタ(山田)だった。だが、決定打が見つからないうちに、死体にガスが発生して爆発の危機に…!

 アラタの元恋人で環境大臣秘書官雨音ユキノ(土屋太鳳)との関係やアラタの過去の謎の事件の真相も気になるところだが、やっぱり面白いのは「日本の偉い人たち」の反応だ。

大怪獣の死体を見て、げんなりした内閣総理大臣(西田敏行)は「誰があとしまつするのかなぁ?」と困惑。財務大臣(笹野高史)は「可燃ゴミってわけか」、厚生労働大臣(MEGUMI)は「生ゴミかと」、国防大臣(岩松了)は「燃えないゴミなんじゃないの」と難しい顔で言い合う。環境大臣(ふせえり)、外務大臣(嶋田久作)、国土交通大臣(笠兼三)、文部科学大臣(矢柴俊博)、官房長官(六角精児)も加わって、話はちっともまとまらない。ベテラン俳優陣の「不毛な議論技」はすごい。

 この映画を観て思ったのは、特撮や怪獣映画に詳しくない自分の中にも「怪獣とはこういうものだ」という固定したイメージ、思いこみが結構あったのだということ。この映画は、そうした固定イメージや思い込みを次々とひっくり返してくる。

 一番わかりやすいのが、怪獣の大きさだ。今回死んだ怪獣は、とにかくでかい。「最全長380メートル」。東京ドームの約1.5倍で、端から端まで徒歩5分。「最全高155メートル」通天閣の約1.5倍だという。昭和のゴジラの多くが50メートルほどで、破壊するビルなどのバランスから、なんとなくイメージが刷り込まれてきたが、今回の大怪獣は、そのほぼ三倍ときた。さすが大怪獣。考えてみれば、怪獣の大きさには基準などないので、どんなサイズでも形でも観客は受け入れなければならないのである。監督は「難題はでかいほどバカバカしい」と発言している。怪獣の呆れるほどのでかさこそが、この映画の肝なのである。

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