「意見の相違はあった」
選考委員会から半月以上が経っても、賛否の議論に収束の気配はない。静岡県高野連が選考理由の丁寧な説明を求めたのに対し、日本高野連が2月10日に「詳細な内容は公開になじまない」と拒否したことも要因だろう。
選抜の選考委員会は、5つの「地区別小委員会」に分かれ、21世紀枠3校を除く29校を選出し、主催者の日本高野連と毎日新聞が承認する。毎日新聞は1月28日付の朝刊で全選考委員の氏名を掲載しているが、誰がどの地区の選考にあたるかは明らかにしていない。
私の調べによると、東海地区担当の選考委員は8人。選考委員長の鬼嶋一司氏(元慶応大監督)に加え、六大学野球の監督経験者が1人、社会人野球で監督を務めた2人の指導者。そして静岡県高野連の理事長である渡辺才也氏に、都道府県の高野連で役員を務めたOBが2人。さらに毎日新聞OBが1人の計8人である。
県大会を勝ち上がった学校が揃う秋の地区大会は、選抜の“予選”ではない。選考委員が地区大会を視察して試合内容を吟味し、成績の下位校が選ばれることもある。だが、聖隷と大垣日大の勝ち上がり方や投打の成績を比較しても、準優勝した聖隷が落選する数値的な根拠は見当たらない。
さらに選考委員長の鬼嶋氏は会見で、「個々の能力の差」「投手力の差」「甲子園で勝てるか」といった理由を列挙した。
聖隷はエースと正捕手をケガで欠くなか、本来は外野手の左腕・塚原流星の好投などで準優勝を果たした。鬼嶋委員長が挙げた選考理由は、チームの輪で勝ち上がった聖隷の選手を否定するような発言ではないか。
選考委員8人のなかで、最初に口を開いたのが静岡県高野連の渡辺理事長だった。渡辺氏は最初の赴任地が浜松商で、当時、野球部を率いていたのが上村監督だった。
「私は聖隷さんが選ばれると信じていました」と渡辺氏は言った。ならば委員会はどのように進行したのかと訊ねると、なんとも歯切れが悪くなる。
「選考委員としての背任行為になるかもしれませんので、お話しできないんです。上村監督が腑に落ちないところがあるのは十分わかります。準優勝した粘りとか、外野手が緊急登板した状況でも結果を残したことが評価されなかった」