複数の関係者から得た情報によると、渡辺氏ら3人が聖隷を推し、あと3人が大垣日大を推薦。真っ二つに割れ、最後は委員長の裁量で結論を出したということだが、渡辺氏はこう答えた。
「それはなんとも言えません。強いて言うなら、賛否が分かれた」
意見の内訳に関しても最後まで口を閉ざした。
私は名古屋や浜松、富士宮、京都に足を運び、選考委員を含めた約30人の野球関係者から情報を集めた。上村監督を知る指導者は「先生には恩義がある」と口を揃え、選抜優勝経験のある指導者は怒りの声をあげた。
「10人選考委員がいれば10人が聖隷を選ぶ戦績。どうしてこんな選考となったのか。私は選抜が汚されたと思っています」
重要な証言者となる選考委員には手紙などで依頼した。すると、そのうちの一人が取材に応じ、匿名を条件に選考過程についてこう答えた。
「東海大会が終わった時点から、意見の相違はありました。選考委員会の当日も、意見が割れるだろうな、という思いで会議には臨みました」
どちらを推したかについては「お答えいたしかねますね……」という反応だったが、この選考委員A氏については、小委員会の終了時刻が迫り、決をとる際に棄権したという情報もあった。そうでなければ、鬼嶋委員長を除いた選考委員7人の意見が「3対3」に分かれることはない。
「それについてもお答えしかねます。ただ、鬼嶋委員長が最後に意見をまとめたというのは皆さんがおっしゃる通りです。私が発言することによって、どなたかの名誉に関わることは避けたい。それぞれが意見を述べ、委員長が大垣日大に決定した。それが総意です」
A氏は慎重に言葉を選びながらそう話した。
大垣日大は「中程度……」
鬼嶋委員長が選考委員会の前日、選考に関してA氏に電話を掛けていたという情報も耳にしていた。それを問うとA氏は「私の立場上、質問には答えかねます」とし、否定はしなかった。あとは鬼嶋委員長に聞くしかない。A4用紙1枚の質問状を送ると、その日の夕刻に鬼嶋委員長から慌てた様子で電話がかかってきた──。
「毎日新聞からは止められたんだが、連絡をしないのは失礼だと思って。質問のなかで2点否定したい。前日に他の選考委員に連絡を入れて話すようなことは絶対にないし、決議を棄権した方がいるというのも事実ではありません。先に7人から、聖隷と大垣日大の投攻守の意見を聞いて、すべてが出そろってから、(小委員会の終了時刻が近づき)僕も方向性を決めなければいけないから(大垣日大に決まった)」