すくすく成長する娘に母・和さんがいないことをどう伝えるか
パパはずっとママに会いたいと思っている
「ちょうど今日、保育園の面談だったんです」
台所で、夕食の準備を始めた将一さんが言った。
「和もぼくも人見知りなので、娘も溶け込むまでに時間がかかるかなと思ったら、ぜんぜん。みんなの中に笑顔で突入して、きゃっきゃ遊び始めたのでひと安心しました」
4月から、娘は近所の保育園に通うことが決まっている。延長保育の制度があり、朝7時半から夜9時まで開いているという。
「出社する日が増えても、できるだけ自分で娘の面倒を見るつもりです」(将一さん)
今日の娘の夕食はハンバーグに卵焼き、トマト、軟らかいおじや。彼女のための食事は、1食分ずつラップで小分けにして冷凍してある。
将一さんのご飯は、コンビニ弁当。「自分の食事までつくる余裕はまだない」と話す。
食卓の上には、ウエディングドレス姿の和さんの写真が置かれている。
「食事のときは、3人で一緒に食べている気持ちになって、心にグッときます。
それと、最近気づいたんですが、娘の寝姿が和とそっくりなんです。寝ている娘がそばにいると、思い出します。
でも、いまは和のことを考えすぎないようにしているんです。集中して考え始めるとつらいので……。彼女の遺した日記も、まだ全部は読めていないんです」(将一さん)
保育園に入り、同世代の子供たちと接するうちに、娘はある日「ママがいない」ことに気づくかもしれない。あるいは、友達から「どうしてママがいないのか」と聞かれることもあるだろう。“その日”のことを将一さんはどう考えているのか。
「来年か、それとも再来年か。話せるようになって、もう少しいろいろわかるようになったら、ママの和がいないことは自分が娘に伝えないといけないと思っています。
まだはっきりとは決めていないですが……病名などの具体的な理由は、もっと後でいいかな。いまこの世界にママはいないこと、会えなくてもパパはずっとママに会いたいと思っていること、そして、ママはあなたのことを本当に大切に思って愛していたことを、まずはわかってもらえたらと思います」
将一さんは、娘とともに歩き始めている。
※女性セブン2022年3月17日号
娘と桜並木を散歩(2021年4月)
お誕生日プレゼントのピアノを弾く娘
結婚当時の遠藤和さんと将一さん(2019年12月)
間もなく1才の頃。喃語を話すようになったという
手術前、娘と抱き合う和さん
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離乳食を与える和さん