そんな大野を島に引き留めた西田は、選抜出場の功労者かもしれない。
「小学校、中学校と見てきて、島外を含めてのトップクラスの投手で格が違った。体は小さかったけど、全身を使ってキレの良いボールを投げていた。稼頭央と一緒ならどこまで行けるのか。そうしたワクワク感があった」
西田のインタビューには主将で遊撃手の武田涼雅も同席していた。彼の父親もまた大高のOBだ。いや部員の両親のほとんどが大高出身だ。郷土と母校への愛着が連綿と続く。武田もエースに対する絶対の信頼を口にした。
「九州大会の準々決勝・興南戦では、それまでのスタイルを一変させて、技巧派に切り換えた。球数制限を気にし、三振よりも打たせて球数を減らそうとした。そうしたスタイルチェンジがすぐにできるところも強み」
(後編につづく)
【プロフィール】
柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/ノンフィクションライター。1976年、宮崎県生まれ。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。著書に『永遠のPL学園』(小学館文庫)。2016年、同作で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。
撮影/比田勝大直
※週刊ポスト2022年4月1日号