2017年10月、JR西日本の大阪環状線を引退する103系ラストラン。大勢のファンに見守られる中、京橋駅に到着した(時事通信フォト)

2017年10月、JR西日本の大阪環状線を引退する103系ラストラン。大勢のファンに見守られる中、京橋駅に到着した(時事通信フォト)

「115系の撮影会・見学会は、以前から実施されています。撮影会・見学会はファンの方々からリクエストをいただいて開催していますが、今回はたまたま引退後の実施になりました。ラストランだから開催したというわけではありません」(JR東日本新潟支社広報担当)

 ラストランや記念列車の運行は、少数ながらも周囲を顧みずに暴走する鉄道ファンが現れる。それらを防止する対策として、昨今の鉄道会社は撮影会・見学会などを有料化する傾向にある。これなら参加人数を絞れて安全を確保しやすくなる。

 また、参加者は申し込み時に住所・電話番号などを鉄道事業者に通知しなければならない。下手なことをすれば、出入り禁止になるかもしれない。そんな心理が暴走行為に歯止めをかける。

 また、鉄道会社もラストランについて工夫を凝らしてもいる。近年は、いきなり引退させるのではなく、”定期運行の終了”というクッションを挟む。定期運行は終了しても、その後も引き続き不定期で運行させる。こうした手順を踏むことで、少しでも混乱を抑えようとしているようだ。

 当たり前のことだが、鉄道事業者はトラブルを発生させたくない。だから混雑を避けるために、サイレントラストランを実施する鉄道事業者の心理は十分に理解できる。

 とはいえ、サイレントラストランや撮影会・見学会の有料化に釈然としない鉄道ファンも少なからずいる。

 しかし、コロナ禍でテレワークやソーシャルディスタンスなど、暮らしや社会は大きく変わった。コロナが収束しても、以前のような社会に戻ることはないだろう。

 同様に、鉄道を取り巻く環境もコロナ禍で大きく変化した。混乱を最小限に抑えるサイレントラストランや撮影会・見学会の有料化が、早くもスタンダードとして定着している。

 結局のところ、ラストランだからといって急に慌てて乗ったり撮ったりするのではなく、日頃から乗る・撮ることが肝要なのかもしれない。

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