北海道の小麦畑で小麦の収穫(イメージ、時事通信フォト)

北海道の小麦畑で小麦の収穫(イメージ、時事通信フォト)

日本中で必要な量なんて賄えない

 日本の小麦はアメリカ、カナダ、オーストラリアの3カ国で90%以上を占める。日本はこの30年間上がることのなかった平均賃金と国力の衰退、超大国となった中国の台頭により資源の買い負けと海上貿易の弱体化、そして出遅れた脱コロナ禍、円安、戦争と悪状況の重なり続けたあげくに今回の緊急対策発表となった。筆者はこの半年の間『憂国の商社マンが明かす「日本、買い負け」の現実 肉も魚も油も豆も中国に流れる』『商社マンが明かす世界食料争奪戦の現場 日本がこのままでは「第二の敗戦」も』『ウクライナ侵攻の裏で進む世界食料争奪戦 激安を賛美する日本の危うさ』『悪しき円安と値上げの春 日本の「買い負け」はどこまで続くのか』と一貫して取り上げて来たが、残念ながらすべて現実となってしまった。

「たとえばですけど、日本の気候で強力粉は難しい。日本中で必要な量なんて賄えない。科学の進歩に期待という悠長な話なら、それは緊急対策じゃありません」

 小麦粉はたんぱく質の含有量によって、パンの原料になる強力粉、うどんや即席麺になる中力粉、お菓子の材料になる薄力粉などに分類される。日本国内で生産される小麦の生産量は増えているが、ほとんどが中力粉で、もっぱら日本麺に使用されているのが現状だ。国産小麦と書かれて販売されているパンも、イメージされる100%国産小麦ではなく、ほとんどが外国産とのブレンドだ。

「それなのに輸入小麦を米粉や国産小麦への切り替えを進めるなんて、いや無理でしょ、できたとしても遠い未来ですよ」

 日本は気候も面積も小麦の生産にすこぶる向いてない。向いていたらとうの昔に米のように作っているはずで、国内生産は10%強しかない。そもそも農地がまったく足りない。もちろん米農家を小麦農家にしろ、なんて簡単な話でもない。後述するが農家、農業従事者そのものが急速に減っている。現状は国内需要を満たすほどの「国産小麦への切り替え」なんて無理だ。

「できたとしても遠い未来ですよ、現場からすれば絶対無理です。少なくともそれ、緊急対策ではありませんよね」

 高騰する小麦に関して、政府は輸入小麦を米粉や国産小麦への切り替えを目指すとした。また小麦から米へ、とも。筆者も思う。本気で言ってるのかと。なんだか「やってるふり」のために付け足したみたいだ。

「日本の小麦のほとんどは5銘柄が占めています。これを日本が国内需要分、作るって話なんですかね、穀物に関わってる人ならわかる話ですが無理です。ましてすぐになんて、これまでにない農業技術の革新、とか必要なレベルの話です」

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