日本の食パンはほとんどカナダ産小麦を原料としてきた(イメージ、時事通信フォト)
国策研究所である理化学研究所すら600人削減する日本でそれができるかはともかく、日本の輸入小麦は主にアメリカのDNS、HRW、WW、カナダの1CW、オーストラリアのASWの5銘柄に集約される。飲食、調理関係の仕事をしている方には馴染みがあるかもしれない。とくにカナダの1CW(ウェスタン・レッド・スプリング)は日本の食パンといえばこの強力粉、というほどに馴染み深い。
「先ほども言いましたが、強力粉を日本で作るのは難しいので、国内需要のほとんどは全面的に輸入に頼ってます」
小麦は品質とその安定、そして生産性が大事。先の3カ国のような良質の小麦が豊富に穫れる地域もあれば、生産力はあってもロシアのように品質が低いとされる地域もあるし、日本のように小麦栽培そのものが難しい地域もある。また地域によって強力粉(パン)、準強力粉(ラーメン)、中力粉(うどん)、薄力粉(ケーキ)、デュラム・セモリナ(パスタ)といった特徴もある。※カッコ内はあくまで代表的なものを挙げた。
「日本にもあるにはありますが、作付面積からしたら産業と呼べるレベルではありません。関係者は努力してますが、作付面積も小さく、質も安定しませんね」
日本はわずかながら中力粉はつくられている。国産うどんなどはまさにそれ、そのほとんどは雨の少ない瀬戸内の一部や北海道を中心に生産されている。
「日本のような高温多湿で雨が多く平地の少ない地域は一番向いてません。米農家からの転作も進めてますが、国民全体の食を支えるにはほど遠いですね」
7月の参院選が終わったら市場価格を反映するでしょう
小麦の国内消費量は約640万トン、国産小麦の収穫量は約94万トン、意外と作っているように思えるが日本の気候ではとにかく安定せず、2020年は約8万トン減少している。また一番問題なのが離農や労働力不足により作付面積が増えないことにある。小麦がないなら米を食えばいい、なんて1960年の半分(一人当たり)しか消費していない現代人が言えた話ではない。そもそも農業就業人口そのものが1960年から6分の1に減っている。2000年から現在でも半分以上の農業従事者が消えた。
「転作で稼いでいる国内小麦農家もありますが、あくまで小規模農業の話です。素晴らしいことですが、食料安全保障の問題とは別ですね。小麦に限った話ではないですが」
