2019年の参議院議員選挙に立憲民主党から立候補した市井紗耶香さん。今夏の参院選も公認候補として予定されていたが、後に立候補を辞退(撮影:小川裕夫)
実際、埼玉県・大宮駅の街頭演説では、集まったギャラリーを前にして手話を交えながら「障害者福祉に取り組みたい」と決意を述べている。
2019年の参議院議員選挙に出馬したモーニング娘。の元メンバーだった市井紗耶香さんも、アイドルグループ経験があるということから同じように見られた一人だ。街頭演説でも4人の子育てをしていることを強調し、子育て支援に取り組みたいと表明。子育てが大変なことは理解できるし、手の離せない時期に政治家へ挑戦する意気込みは評価できたが、市井候補から具体的な子育て支援政策を聞くことはできなかった。
子育て支援は女性政治家だけのものか?
タレント候補と呼ばれる女性候補者の多くは、子育て経験などを強調することが多い。少子化が進む現在、子育て支援は重要な政策になっているが、男も子育てする時代において、子育て支援は女性政治家の専売特許ではない。女性だから子育て支援に取り組むという主張は、古い体質が残る永田町では多少なりとも通用するが、一般世間では時代遅れになりつつある。
生稲さんは、乳がんを患ったことがある。それでも働く母として芸能活動を継続した経験から、第3次安倍内閣が設置した働き方改革実現会議の有識者委員に就任した。
そうして政治との距離を縮めた生稲さんは、政治家を志すようになった。今夏の参院選自民党から出馬することを表明し、4月29日に東京・品川区の大井町駅前で街頭演説デビューした。
5月4日には、元法務大臣の松島みどり議員と一緒に荒川区・墨田区・台東区などを回った。これらは、松島議員の地盤でもある東京14区に属する。
通常、街頭演説は一か所に最低でも30分は滞在する。生稲さんの演説だけだったら、30分は長すぎる。しかし、その前後に応援弁士がマイクを握る。そのほかにも、地元選出の都議会議員や区議会議員が集まった支持者に向かってあいさつをする。これら一連の”儀式”を一通りこなすのに本来なら30分では足りない。
ところが、生稲さんは一か所に20分も滞在しない。マイクをにぎっても、乳がんを患った話や有識者に就任した話をするだけで、政策や政治への思いを熱く語ることはほとんど見られない。