キャンプ・シュワブの新基地建設現場では、建設反対派の抗議にも警備員が一糸乱れぬ隊列で警護する。警備は県外企業が請け負っている
米軍・米兵による相次ぐ事件・事故、払拭できない不信感
復帰以来、沖縄は基地問題に振り回され続けてきた。「世界で最も危険な基地」といわれる普天間飛行場もそのひとつだ。米軍機関連の事故は、復帰から2020年末までの間に826件発生し、2004年には普天間に所属する大型ヘリが沖縄国際大学に墜落、炎上した。
米兵犯罪は累計で6000件超。特に1995年の米兵少女暴行事件は犯人の身柄が引き渡されず、大きな問題となった。米兵には日本の裁判権が及ばないなど、特権的な日米地位協定の見直しを求める声が強まり、普天間返還合意のきっかけになった事件だった。
「取り組みの成果もあり、件数は減りましたが、殺人など凶悪犯罪は復帰後だけでも580件を超えています」(前出・前泊氏)
米軍への不信感を払拭できないまま、普天間の移転先として沖縄本島北部の辺野古沿岸部の工事は強行。県民の新基地建設反対の声は、今も上がり続けている。
日本人が立ち入ることのできない“沖縄”
沖縄を南北に貫く国道58号線を走ると、琉球の風情を感じる町並みや美しい海が目に飛び込んでくる。そのなかで異様な存在感を示すのが、至るところに張り巡らされたフェンス。ここから先が米国であると知らせる、いわば国境線が、復帰から半世紀を経た今も、沖縄を縛り付けている。
眩いばかりに白い浜辺に降りると、その先に許可なく立ち入ることを禁じる看板に行く手を阻まれる。真上を舞う戦闘機は、日本の子どもたちが怯え、時に耳を塞ぐほどの轟音を響かせるものだが、フェンスの向こう側で無邪気に遊ぶ米国の子どもたちが意に介する様子はない。空軍基地を一望できる「道の駅かでな」には、物珍しい基地の様子を見に観光客が訪れる。基地も沖縄の観光スポットのひとつになったかのようだ。
「米軍基地問題は全国にあります。『沖縄問題』と矮小化せず、総点検すべきだと感じています」(前泊氏)