メーカーにしろサービス業にしろ、一般の企業ではどんなものを売ろうかとなった時に、まず商品のコンセプトを考えて、それをどうやってつくっていくか、ということを検討します。ところが、文科省の場合には、どういう人間をつくりたいのかというコンセプトもなければ、新たな教育をするためのシステムをつくり直すこともしていません。
もう1つ大きな問題があります。それは、今の子供たちは小さい頃からスマホが身近にあって、スマホとともに育っています。スマホを使って検索すれば、すべての知識があります。にもかかわらず、それを必死で子供たちに覚えさせようとしているのが、今の文科省教育なのです。
今までの義務教育で子供たちが学んできたすべての知識というものは、スマホの中に入っています。昔、私はこの義務教育で学習する内容をすべてチップに入れたらどうなるか、計算したことがあります。今から25年以上も前のことですが、その当時で158円とか、そのぐらいの数字でした。今、それを計算してみると、たったの5円です。義務教育で覚える知識をすべて足しても5円にすぎません。
さらに、文科省は学習指導要領を出しています。この学習指導要領に従った授業をやっている学校は「一条校」(学校教育法第一条で規定)と呼ばれますが、そこは国からの補助金で運営しています。そのため、文科省の指導・監督から外れることはできません。学校側で自由に裁量できるのは、1週間のうちの半日ある自由時間だけです。これでは、現場の先生たちが考える独自の教育はできません。
そこで、私は当初からそういうものに従わずに、小泉純一郎政権下で実施された構造改革特区の制度を活用して株式会社による「BBT(ビジネス・ブレークスルー)大学大学院」を設立しました。さらに、アオバというインターナショナル・バカロレア(IB/国際的に通用する大学入学資格)の学校もやっていますが、逆にIBの基準は、教科書を使って教えている先生はマイナスの評価になります。
なぜかと言えば、先生は自分の考えや哲学を伝えるのが役割で、教科書に沿って教えているなら先生がいる意味がない、という考え方だからです。その先生が教科書なしでどんなことを教えられるのか、質問して問題解決に至るまでにどんなプロセスを踏むのかが重視されます。もし学習指導要領どおりにやるのなら、動画を使ってネットでやれば、日本全国、1人の先生でいいわけです。文科省の学習指導要領というのはどこでも同じですから。
このように、価値のないことにどんどん日本の子供たちを追い込んでいっているのが、今の文科省教育なのです。