日本の生徒の学力は低下傾向
21世紀の教育というのは、見えないものを見る力、0から1を生む構想力──こういったものを育んでいくようなものでなければなりません。ところが、いま文科省が進めようとしている教育は、それに逆行するような古い知識の“詰め込み型”です。それがいかに間違っているか、具体的に見ていきましょう。
PISA(ピザ/OECD加盟国などで15歳を対象に3年ごとに実施されている学習到達度調査)という国際学力調査の結果を見てみると、日本の場合はもともと読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーのいずれのカテゴリーでも上位でしたが、最近は私が言っているようなデジタル社会に対応が早かった北欧諸国や、昔ながらの詰め込み型の教育をやっているアジア諸国などが上位のほうに来るようになっています(図表1参照)。
【図表1】国際学力調査で日本の順位が下がっている
日本は、詰め込み型の教育のままで、しかし他のアジア各国ほどには徹底していないため、徐々に相対的な学力が下がってきているということです。
次に大学のランキングを見ても、日本は伸びておらず、2021年の数字ではトップの東京大学でも36位、その次の京都大学が54位となっています。それに対して、アジアのトップは中国の清華大学や北京大学、あるいはシンガポール国立大学が上がって来ています(図表2参照)。
【図表2】大学世界ランキングは10年で様変わり
それで、世界中からそれぞれの国で勉強しようとして留学生が集まって来ます。しかし、欧米などと比べると、日本に来る留学生はまだ少ない状態です。
たとえば2019年の統計では、アメリカには100万人近い留学生が来て、うち中国が33万人とトップです(図表3参照)。中国はピーク時には69万人も送りこんでいました。その頃の中国人留学生は、祖国を離れたくてアメリカに行くという人が多かったのです。
【図表3】世界では日本人留学生の影が薄い
ところが、近年は留学を終えると中国に戻る人が多く、「ウミガメ派」と呼ばれています。このウミガメ派の留学生の多くが今の中国の経済発展、学問の発展、特許その他につながっています。続いてインドが13.5万人、韓国が5万人超ときて、日本は1万5000人弱となっています。
留学生受け入れ数で、アメリカに次ぐのはイギリスで約45万人、続いてオーストラリアで約44万人となります。日本は約18万人です。