世界に散らばるロシアネットワーク
条例が出来て警察が摘発を行うようになってからも、盗難車の輸出は続いているという。
「彼らにとっては、盗難車を外に出すのが一番の収益になる。新潟や富山の港から船で運ぶ。以前は、ロシアにはどんな車でも輸出できたが、今はもう無理だ。当時は日本人もロシア人とつるみ、盗難車と分かっていて輸出していた。ロシアで走っている車で、少し前の型のランドクルーザーは、ほぼ日本からの盗難車だと思って良いだろう」
車を盗むのは誰なのか。
「盗んでくるのは日本人。その中でも半グレや元ヤクザなどのアウトローだ。彼らがつるみ、窃盗集団になって盗みをやる。それを外国人が買い、ごまかして外に出す。部品にすると関税が軽減されるから、解体して部品として東南アジアに輸出することも多い。パソコンなどの盗難品は、盗難車に混ぜて取引している。取引にかかわるイラン人もパキスタン人も独自にルートを持っている」
意外にも彼らは、外国人同士で手を組むことはあっても、暴力団と組んで取引することはないという。
「こうした犯罪で、イラン人とロシア人は比較的組むことが多く、ロシア人はパキスタン人と組むことがある。ロシアの勢力は大きく、世界中にネットワークがあるからな。日本では神奈川や千葉がメインだが、全国に散らばり、シンジケートを世界中に持っている。彼らはある意味マフィア組織に類似していて、暴力団とは違う。暴力団とは取引をせず、組んで仕事をすることもない。
犯罪にかかわるロシア人もイラン人も、悪事は働くが正業を持っていて、その収益も大きい。実態はマフィア化していても表の顔を持ち、社会に普通に溶け込んでいるから、警察沙汰になるような事件は起こさないし、拳銃なども持っていない。トラブルを嫌うので、取引相手にヤクザは選ばない」
彼らの間でも、中国人はまた事情が異なるという。
「犯罪を行う中国人は、ロシア人やイラン人と組むことはあまりなく、誰も彼らとはつるまない。彼らは何かあると集団で向かってくるし、正面からぶつかってくるから危険だ。シマ意識もあるし、喧嘩もドンパチも平気。周囲とのトラブルも多いため、彼らと組みたがる者はいない」
条例が制定されても、「こうした不法ヤードでは、いつどんなトラブルが発生するか分からない」とA氏は語る。
「各県では条例によりヤードに立ち入ることができるようになったとはいえ、盗難車を保管し解体しているかどうかまで確認するのは困難だとも聞く。不法ヤードを減らすには、県の担当者や警察による粘り強い対応しかないようだ」