国内

変わる街頭演説と下がる政治参加のハードル 質問のため挙手する男子高校生も

高田馬場駅前で街頭演説中の乙武洋匡さん。乙武さんは戸山高校・早稲田大学卒なのでと高田馬場はゆかりの地(撮影:小川裕夫)

高田馬場駅前で街頭演説中の乙武洋匡さん。乙武さんは戸山高校・早稲田大学卒なのでと高田馬場はゆかりの地(撮影:小川裕夫)

 もうすぐ選挙シーズンが本格化する。それに伴い、主要駅前など人が集まるところでは、立候補予定の人たちが街頭演説を活発化させている。街頭演説というと、壇上から一方的に話される言葉を聞くイメージが強いかもしれないが、最近では聴衆との対話を増やす演説が増えるなど変わりつつある。ライターの小川裕夫氏が、街頭演説スタイルだけでなく、有権者にも小さいながらも変化の兆しを見た、高田馬場駅前の該当演説についてレポートする。

 * * *
 今夏に実施される参議院議員選挙は、事前から盛り上がりに欠けることが予測されていた。特に、定数6の東京選挙区は自民党・立憲民主党の現職議員が引退するものの、構図は変わらずに無風との観測が強まっていた。

 しかし、れいわ新選組の山本太郎代表が衆議院議員を辞職して参議院議員に鞍替え出馬を表明。そのほかにも、『五体不満足』などの著者として知られるベストセラー作家の乙武洋匡さんも出馬を表明。これにより、東京選挙区は一気に激戦区と化した。

 東京選挙区は有権者数が多い。浮動票を一票でも多く獲得するために、選挙戦では多くの立候補者が街頭に立つ。街頭での活動は、一般的に立候補者たちが自身の政見を述べる場だった。

 しかし、ここ数年は従来の街頭演説に変化が見られる。街頭演説のうち、政治家たちが自身の政見を述べるのは長くても30分。その後は、集まったギャラリーにマイクを渡して意見や質問を受け付ける。質問や意見を受け付ける時間はそのときどきで異なるが、1時間以上に及ぶこともある。なかでも山本太郎代表の街頭演説は、長時間におよぶ傾向が強い。

 本来、政治家は「自身の意見を言う」ことが仕事ではない。「国民の意見を聞く」ことが本務とされる。岸田文雄首相が「聞く力」を強調したり、公明党が「小さな声を、聴く力」をスローガンに掲げたりしていることは、政治の基本中の基本に過ぎない。

 それにも関わらず、昨今は聞く力が強調されるトレンドになっていた。そうした背景が生まれたのは、それまで意見を言う政治家がもてはやされていたからだろう。

 しかし、確実に政治の世界にも変化の波が押し寄せている。なぜなら、言うだけの選挙演説から聞くスタイルを採用する候補者・政治家たちが少しずつ増えている。これは、言うだけの政治が飽きられつつあるという予兆かもしれない。

 ギャラリーから質問や意見を取り入れる選挙演説のスタイルは今後も増えると思われるが、その一方で一般有権者たちが立候補者や現職の政治家に対して筋道を立てて意見を言うことや質問はできるのか?といえば、残念ながら多くの有権者は質問できない。というか、質問をしない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏は2017年にダブル不倫が報じられた(時事通信フォト)
参院選落選・山尾志桜里氏が明かした“国民民主党への本音”と“国政復帰への強い意欲”「組織としての統治不全は相当深刻だが…」「1人で判断せず、決断していきたい」
NEWSポストセブン
現地取材でわかった容疑者の素顔とは──(勤務先ホームページ/共同通信)
【伊万里市強盗殺人事件】同僚が証言するダム・ズイ・カン容疑者の素顔「無口でかなり大人しく、勤務態度はマジメ」「勤務外では釣りや家庭菜園の活動も」
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《巨人V9の真実》400勝投手・金田正一氏が語っていた「長嶋茂雄のすごいところ」 国鉄から移籍当初は「体の硬さ」に驚くも、トレーニングもケアも「やり始めたら半端じゃない」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト