「いろんな意見を聞くつもりだったんでしょうけど、教免更新がそんな組織に決められたのは現場の当事者としては釈然としませんね」
繰り返しになるが、教育再生会議は単なる諮問機関であって、意見をとりまとめて内閣に提出しただけである。だが、提出した報告書が、前年に改定された教育基本法に愛国心に関する記述が明記されたことに続き、これまで教育現場に対して遠慮すべきとされてきたこと、教員免許の在り方に介入したい政府に利用された印象は否めない。現役の教師が「組織」だと受け取ってしまったのは、独立した機関に見えていなかったということだろうか。
彼だけでなく複数の教員、もしくは教員免許取得者の話も聞いているが、誰一人として、「教員免許更新制」が素晴らしかったなどと言っていない。導入のきっかけは「教員の質の低下」で当時の教員バッシングに乗った形だが、いまとなってはそのエビデンスはどこまでのものだったか。「教員免許状更新講習」の運営側にいた元スタッフまでもこのように語る。
「はっきり言ってムダです。意味なんかないことは百も承知で、儲かるからやってる組織でした。天下りはもちろん、教育コンサルとかIT屋まで入り込んで、一部は好き勝手でした」
教員が受ける講習は母校の大学を利用する人が大半だと思っていたが、どうやら教員免許更新を専門に扱う企業や団体があるようだ。振興財団、推進機構、セミナーハウスといった類で、大学の中にはそうした企業や団体に教免更新の講習を依託しているところもあるという。この元スタッフが所属していた団体もそうだと語る。
「元教育関係者はもちろん、教育関係の役人などが退職後に関わってました。理事クラスは文科省の天下りもいました」
元スタッフが講習に関わる仕事をしていた時期は、これまたみなさん覚えていない人も多いだろうが2017年に発覚した文部科学省による組織的な「天下りあっせん事件」より前である。当時はスキャンダルとして大きく取り上げられ、なんと事務次官が天下りあっせん事件問題で辞任、のちに退職金約5610万円を貰って自己都合退職したことや、貧困女性の実態調査の名目で出会い系バーに通っていたことに非難が殺到した。
「終わった話とはいえ彼、SNSでけっこう人気でしょう。ほんと、みんな忘れっぽいんでしょうね」
うろ覚えだがその件、調査の場所が新宿の出会い系バー「ラブオンザビーチ」(当時の店はすでに閉店)だったことは妙に印象に残っている。それはともかく、その他にも東京国立博物館館長、日本宇宙フォーラム理事長、東京理科大学副学長、大学入試センター理事など(すべて当時)、天下りあっせんに関与したと文科省調査により認められた元役人たちがそれぞれ処分を受けた。
「みんなすぐ忘れちゃいますよね、そもそも教免更新自体、『すでにあるもの』として長く定着したわけで、教免捨てちゃった人(条件による)も多いでしょうね」