国内

教員免許更新制が廃止へ 「儲かるからやっていた」との指摘も

2022年05月11日、参院本会議で教育公務員特例法と教育職員免許法の改正案が可決され、一礼する末松信介文部科学相(時事通信フォト)

2022年05月11日、参院本会議で教育公務員特例法と教育職員免許法の改正案が可決され、一礼する末松信介文部科学相(時事通信フォト)

 7月1日から教員免許更新制が解消される。公教育の質の向上を目指して、2009年4月1日から鳴り物入りで始まった同制度だが、あっけなく終了が決まった。俳人で著作家の日野百草氏が、免許更新制を教員はどのように考えて講習を受けていたのか聞いた。

 * * *
「時間も手間もとらせて自腹でした。それでお終い。ほんと、教免更新ってなんだったんですかね」

 久方ぶりの再会に世間話がしばらく続き、やっと本題と饒舌になる筆者の知人の教師。教免更新とはもちろん「教員免許更新制」に基づく「教員免許状更新講習」(以下、教免更新)である。導入された2009年以降「10年ごとに30時間以上の免許状更新講習を受講し、修了すること」(資格取得時期、期限による)が求められてきた。2000年頃から生徒の学力低下が問題として取り上げられることが増えていたが、同時に教員の質も問われるようになり、教員の能力向上を目指して始まった制度だった。

 制度の内訳の詳細はケースバイケースで事例も所属や地域、取得時期にもよる。各教員免許取得者それぞれの事情も異なるため一概には言えない上に一切必要のなくなった話なので割愛するが、これだけははっきりしている。2022年7月1日をもって廃止という性急ぶりも含め、最後まで迷惑な制度であった。これも個々の事情によるが、筆者の知る限り、教免講習は先生自身の自腹でもあった。数万円(多くは3万円程度、主幹教諭など一部は支給された場合も)とはいえ、交通費含め身銭を切るとなると進んで出したくはない金額だ。

「これ、上も下もみんなわかってたはずですよね。だから言い出しっぺが消えたら止めるって話で」

 言い出しっぺ、とは安倍晋三元内閣総理大臣のことで、彼の肝いりで設置された「教育再生会議」のことだという。この名前を覚えている人がどれほどいるだろうか。第一次安倍内閣が2006年10月に設置した諮問機関であったが、その内閣が2007年9月退陣と短命に終わり民主党に政権交代してしまったため2年あまりで解散となった。しかしとんでもない置き土産だけは置いていった、それが2007年6月に導入された教育職員免許法改正による「教員免許更新制」である。諮問機関に決定権はないが、教育再生会議が2007年1月に提出した第一次報告があってこその法改正だった。その後、間を挟んで安倍内閣(第二次)が復活、「教育再生会議」も「教育再生実行会議」と名を変え復活、見直されることもなく、一貫して教免更新制度は続けられた。決定権がないとはいえ、いずれも現場の教員からすれば責任あるように見えてしまうのは仕方のない話かもしれない。

「従うしかないからこそ、理不尽だと思います」

教員免許状更新講習は、はっきり言ってムダだった

 お上が決めれば従わざるをえない。とくに資格に基づく仕事となると、その資格が無ければ仕事ができない場合も多く、これまた仕方のない部分である。ちなみに筆者からすると教育再生会議は人気者を集めて話題になった記憶がある。浅利慶太(劇団四季創設メンバー)、海老名香葉子(初代林家三平の妻)、小谷実可子(シンクロ銅メダリスト)、渡邉美樹(居酒屋チェーン・ワタミ創業者)、張富士夫(トヨタ自動車会長・当時)など、座長はノーベル科学賞を受賞、のちに理化学研究所理事長となり小保方晴子らのSTAP細胞不正論文事件の渦中に退任した野依良治であった。(※敬称略)。

関連記事

トピックス

雅子さまが三重県をご訪問(共同通信社)
《お洒落とは》フェラガモ歴30年の雅子さま、三重県ご訪問でお持ちの愛用バッグに込められた“美学” 愛子さまにも受け継がれる「サステナブルの心」
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
「とにかく献金しなければと…」「ここに安倍首相が来ているかも」山上徹也被告の母親の証言に見られた“統一教会の色濃い影響”、本人は「時折、眉間にシワを寄せて…」【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン