ライフ

小児の「急性肝炎」増加 疑われるアデノウイルスの関与と新型コロナの影響

増加する小児の「急性肝炎」の原因とは

増加する小児の「急性肝炎」の原因とは

 今もその対応に悩まされている新型コロナウイルスだけでなく、人類は様々な感染症とともに生きていかなければならない。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、増加する小児の「急性肝炎」の原因についてお届けする。

 * * *
 肝臓にウイルスが感染して肝細胞が壊れたり、その機能を損ねたりするなどして肝炎を起こすことがあります。これがウイルス性肝炎です。原因となる肝炎ウイルスはA型、B型、C型、D型、E型などが知られています。

 現在、欧米を中心に小児の原因不明の急性肝炎の報告が相次ぎ、通常よりも高い頻度で患者が増えています。厚生労働省によると日本でも2021年10月から2022年5月19日までに原因不明の小児の急性肝炎の入院症例が24例報告されていますから、心配しています。

 この小児の急性肝炎は、欧米など12か国169人の発症例(生後1か月から16歳)の報告では、患者の約1割が肝臓移植を必要とする重症例でした。犠牲者も出ています。このような重症な肝炎を子供に起こす原因となる一般的な肝炎ウイルスは見つかっていません。

 現在のところはっきりとはしていませんが、英国の患者の約7割からアデノウイルスが見つかっていることから、アデノウイルス41型の関与が疑われています。アデノウイルスと一口に言っても多くの血清型があり、発熱、咽頭炎、眼症状などを起こす咽頭結膜熱(別名プール熱)や、「はやり目」とも呼ばれる流行性角結膜炎のように呼吸器、胃腸、眼症状などいろいろな病気を起こします。また、乳幼児の急性気道感染症の1割程度は、アデノウイルスによるものとされています。

 一方、アデノウイルス感染による肝炎の発症はあまり聞いたことがありません。むしろ、アデノウイルスの感染で健康な子供に重症な肝炎が起こってくることは、これまでのこのウイルスの常識では「稀」と言えるでしょう。

 小児の急性肝炎が起こった国々では、オミクロン株の累積感染者数が多いこともあって、新型コロナウイルスがアデノウイルスの感染に影響しているのかもしれないという推論もあります。新型コロナウイルスに感染して、一時的に免疫が低下したような状態でアデノウイルスに重複感染すれば、症状が悪化することもあるのかもしれません。

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン