「おかしいと思ったらすぐ病院に行く」が自分の命を救う
主治医の先生が教えてくれた「病院に行くべき胸の痛み」の特徴は次のとおり。
【場所】ネクタイの範囲(首、胸、お腹)や耳の後ろ、背中など
【感覚や症状】圧迫感、重い石が乗っているような重苦しさ、ギュッと胸をつかまれるような感じ、冷汗をかく、鈍痛と同時に左の奥歯が痛む
こうした痛みが5分以上、または10~15分続いたら、それは心臓からのSOSと受け止めましょう。突然脈が速くなったり遅くなったりなど、脈の乱れが続く場合もあります。
しかし、いざそうなっても多くの人は、希望的観測にすがったり「今週は仕事が忙しいから」「何科に行けばいいかわからないから」「検査して何ともなかったら恥ずかしいから」などと言い訳を並べたりして、病院に足を向けようとしません。
リスクは減らしておきたい(イメージカット)
「何科でもいいんです。いちばん行きやすいお医者さんで症状を話せば、適切な病院や科を紹介してくれます。この程度で本当に病院に行っていいのか、痛みは治まっているから行っても無駄じゃないのか……という気持ちは、よくわかります。私もそうでした。でも、お医者さんはけっして『この程度で来やがって』なんて思いません。いろんな可能性を考えて、どんな検査が必要かを判断してくれます」
病院で検査をして「すぐ入院したほうがいい」と言われたのに、仕事があるからと家に帰って、翌日に倒れて救急車で搬送されてきたケースもあるとか。心臓突然死を防ぐには「おかしいと思ったらすぐに病院に行く。それしかありません」と熊本さん。
家族が「最近、たまに胸が痛くて」とこぼしている。でも病院に行こうとはしない。そんな場合はどうすればいいのか。
「首に縄をくくりつけて引っ張っていけたらいいんですけどね。でも、心配しているうちに何かあったら悔やんでも悔やみきれません。お医者さんや体験者の話を聞くと『騙されたと思って』『家族のためだと思って』『私を助けると思って』(お願いだから病院に行って)といった言い方が効果が高いようです」
リスクを減らすのは、結局は自分の行動と心がけにかかっています。最大の敵は「自分だけは大丈夫」と思ってしまうこと。「過信、妄信、油断を捨てて、ひとつしかない自分の命を守ってください」と熊本さんは言います。経験者の言葉は重いですね。
本には、意識が戻った直後の混乱状態を経てリハビリで「自分」を取り戻していく道のりや、家族や友達がどう支えてくれたかといったことが、リアルに感動的に描かれています。目の前で人が倒れたときにはどうするかといった実用情報も満載。誰しも気が付いていないだけで、じつは“崖っぷち”に立っている可能性はあります。もしかしたらこの本が、あなたの命を救ってくれるかも。
●構成/石原壮一郎
