私が生意気盛りだった20代の頃は、3才年上のあなたに対して「ふんっ、何よ!」と嫉妬めいた気持ちがありました。が、小説やエッセイを読めば、おのれの傲慢、うぬぼれ、勘違いを総動員しても届かない存在であることを思い知るしかなく、決して交わることがない人、そう結論づけていました。
が、忘れもしません。2016年9月29日号の『週刊文春』が発売されるとすぐ、友人から「早く今週の文春読んで!」と絶叫のような電話がかかってきたのです。
林さんが、同誌での連載エッセイ(「夜ふけのなわとび」)で、「私がかねてから発言に注目をしている『女性セブン』のオバ記者こと野原広子さんは?」云々と書いてくださったのです(その号はいまでも大切に取ってあります)。身に余る光栄で、ひとり暮らしの私は凹みそうになると、林さんに名前を書いていただいたことを思い出して自分を奮い立たせてきました。
ちなみにその記事は、連載を一冊にまとめた『下衆の極み』(文春文庫)にも収録されていて、つい2か月ほど前、それを読んだ落語家の三遊亭はらしょうさんがトークイベントに私を呼んでくださいました。それだけでも充分な恩恵でしたが、私にとってはさらに天変地異の出来事が起きました。
昨年4月の初め、女性セブンの文芸担当編集者を通して、「林さんが『ランチを一緒にいかがですか』とおっしゃっています」というお誘いをいただいたのです。あまりのことに約束の日まで地に足がつかず、夢心地。そして当日は、私のアルバイト先の衆議院議員会館の裏にあるホテルまでいらしてくださって、食事の後には、私の拙い案内で、国会議事堂の見学もしてくださいました。
そのときの一言一言は忘れられるものではありませんが、とても印象に残っているのは、食事が始まってすぐにお話になった学歴のこと。林さんは「私たちが若い頃は成績がすごくよくても、家庭の事情で大学に進学できなかった人が大勢いたんですよねぇ」とおっしゃったのです。