元横綱・白鵬も取得に苦労した
もちろん、背景には慢性的な年寄名跡不足という問題もある。優勝44回の元横綱・白鵬でさえ年寄名跡「間垣」を取得するのに苦労した。時津風親方の元前頭・時津海の時津風親方が不祥事を起こして2021年2月に退職していなければ、襲名することができなかったともいわれている。2019年の元関脇・逆鉾の急逝によって閉鎖された井筒部屋の再興を志しているとされる元横綱・鶴竜も、横綱経験者は引退後も5年間まで現役名で親方として協会に残れる特権を利用して年寄名跡が空くのを待っている状態だ。若手親方はこう嘆く。
「問題の根源は2014年に導入された70歳までの再雇用制度でしょう。現在、65歳以上の親方が参与として5人が再雇用されているが、これにより名跡の循環が悪くなった。ひと昔前は肥満が原因で定年前に亡くなることが多かったが、最近は角界も長寿社会となった。さらに70歳までの再雇用制度ができたことで、悪循環に陥っている。名跡の数は105と決まっており、慢性的に不足するようになった。
65歳から70歳までの再雇用期間の親方の給与はそれまでの70%とされ、5年間で約4000万円。65歳で年寄名跡を譲る場合、取得する側は費用としてその分を上乗せしなくてはならないというから、さらにハードルが上がることになる」
今後、松鳳山のような力士が続出すると予想されるが、再雇用制度の見直しが求められる展開もありそうだ。