土砂崩れが発生した広島県安芸郡熊野町(共同通信社)
「台風は、海水温が27℃以上で発生し、水温の高い海域を通るとより発達しやすくなります。かつては、日本よりかなり南のフィリピン近海で発生することが多く、海水温が低い本州に近づくと勢力を弱めていた。
しかし、現在は温暖化によって夏の海水温の平年値も高くなっていて、関東付近まで27℃になるラインが上がっているので、日本のすぐ近くの海で台風が発生してもおかしくない状況です。また、南の海で発生した台風も、その猛烈な勢力を維持しつつ日本列島に到達しやすくなりました」
今年の日本近海の海水温は、例年より間違いなく高くなるだろう。2019年10月、九州から東北地方にかけて土砂災害や河川の氾濫を招いた台風19号では、全国で死者96人を数えたが、今年はそれ以上の強力な台風が発生しても不思議ではないという。
豪雨のたびに危惧されるのが、河川の氾濫だ。東京と神奈川の境を流れる多摩川は、2019年の台風19号で氾濫した。当時の降雨量は48時間あたり473mmだったが、仮に「西日本豪雨」級の雨が降ったとすれば、500mmを超える地域もでてくる。その規模の豪雨が降り注げば多摩川の大規模氾濫は免れない。
荒川と接する江東5区(江東、墨田、江戸川、葛飾、足立)では海よりも低い海抜0m地帯が広がっている。荒川が氾濫すれば、江東5区では最大10mの浸水が2週間以上続くエリアもあり、9割以上にあたる約250万人が浸水被害に遭うと試算されている。
さらに、堤防の老朽化が懸念される隅田川が氾濫する可能性も否定できない。多摩川、荒川、隅田川が同時に氾濫すれば、東京は未曽有の大水害に陥る。そうなれば水は地下鉄にも容赦なく流れ込み、銀座や大手町、丸の内にも到達する。コンクリートとアスファルトに囲まれた都心部は吸水性に乏しく、あっという間に冠水、浸水する。
今年の夏に備えるべきは「水害」だ。カンカン照りの太陽を見上げて「暑い……」と呟いたそのとき、背後には大豪雨が近づいていることを思い出してもらいたい。
※女性セブン2022年7月21日号
「西日本豪雨」で浸水した病院からボートで避難する患者たち(共同通信社)