「今年は2018年に似ています。関東が6月中に梅雨明けしたことや、猛暑と豪雨を交互に繰り返すサイクルが共通しています。263人の死者を出した『西日本豪雨』が発生したのもその年です。豪雨を発生させたのは、『線状降水帯』と呼ばれるメカニズムでした。
巨大台風が日本列島を襲った年でもあります。錨を下ろしたタンカーが台風の強風にあおられて、関西国際空港の連絡橋に衝突したことも記憶に新しいでしょう」(森田さん)
「西日本豪雨」では、6月末から7月上旬にかけ、台風と梅雨前線による大雨が西日本を襲った。多量の水蒸気を含む空気が梅雨前線に流れ込んで停滞したことにより、西日本で大雨が降り続いた。岡山県倉敷市真備町では堤防決壊により町域の4分の1が浸水し、51人が亡くなった。広島ではため池の決壊や土砂崩れが続出し、151人が死亡、1029棟が全壊する惨事となった。
岡山と広島で雨を強めたのは、前述の通り、「線状降水帯」とされている。線状降水帯とは、連続して発生した積乱雲が連なり、列をなして数時間にわたってほぼ同じ場所を通過、または停滞する状態のこと。限られた地域に大量の雨が降り注ぐことになり、水害、土砂崩れなどの危険度が桁違いに跳ね上がるという。近年、気象庁もこの線状降水帯を警戒しており、今年6月1日から「線状降水帯予測」が開始された。
「線状降水帯はいつどこで発生するのか予測が難しい。予測の的中率は2〜3割程度にとどまる見込みです。ただ、1つ言えるのは“今年は必ず発生する”ということです。今年は早い時期からの猛暑で、大気中の水蒸気量が例年より多くなっているので、2018年の『西日本豪雨』のような大雨がくるかもしれないと懸念しています」(森田さん)
森田さんの指摘通り、線状降水帯はさっそく発生した。台風4号は5日の午前6時前に長崎に上陸し、約3時間後に熊本と大分の県境付近で温帯低気圧に変わった。勢力が強いわけではなかったが、甚大な被害が出た地域もある。その要因こそ、線状降水帯だった。
線状降水帯が発生したのは、台風が長崎に上陸する約6時間前の5日未明。台風の東側に湿った空気が流れ込み、太平洋側を中心に積乱雲が発達して局地的な豪雨をもたらした。高知県須崎市では3時間降水量が208mmに達し、観測史上最多を記録。その影響で山林の斜面2か所で土砂崩れが発生し、土砂が道路を完全に塞いだ。
高知県内では約20棟が床上や床下浸水し、道路が冠水するなどの被害が出た。爪痕を残した線状降水帯だが、今回、気象庁は線状降水帯の発生を予測できなかった。
破滅的な豪雨に加え、強力台風がたくさん発生することも心配されている。近年、台風は強い勢力を保ったまま日本を通過することが増えている。気象予報士の真壁京子さんが解説する。