国内

安倍晋三氏がかつて明かしていた「死期を察した父・晋太郎の覚悟」

亡くなった安倍元首相と父・安倍晋太郎(写真/時事通信フォト)

亡くなった安倍元首相と父・安倍晋太郎(写真/時事通信フォト)

 7月8日、午前11時半ごろ、奈良県の大和西大寺駅付近で安倍晋三・元首相が銃で撃たれ、ドクターヘリで橿原市にある奈良県立医科大付属病院に心肺停止状態で搬送された。選挙中の蛮行に対して、与野党問わず政界から安倍氏の回復を願うコメントが相次いだが、その祈りも虚しく、死亡が確認された。

 祖父に岸信介・元首相、大叔父に佐藤栄作・元首相、そして父に安倍晋太郎・元外相──そんな政界きっての名門に生まれた安倍氏はかつて、父・晋太郎氏の「死を覚悟しながらの政治活動」を明かしていた。晋太郎・晋三父子と交流が深く、数多くのインタビュー・撮影を行なってきた報道写真家・山本皓一氏の著書『日本人が行けない日本領土』で、こう語っていた。

《父・晋太郎は晩年、病身をおしてロシア外交に力を尽くしました。私自身は、医師から父の病気がガンであと2年ほどの命であると宣告されていました。父もそれを薄々察していたようです。しかし、それでも最後に自分の命を燃やすようにこの問題に取り組んだのは、これが戦後残していた、解決すべき“宿題”だったからです》

 当時、安倍氏は晋太郎氏の秘書官だった。1989年に膵臓ガンの診断を受けてからも政府・与党の重鎮として東奔西走する父を支え、訪ソにも同行した。

《父・晋太郎も、晩年、最後の力を振り絞って厳寒のロシアに赴き、それまで「領土問題は存在しない」という立場を崩さなかったソビエト連邦(当時)の主張を変えさせました。1990年1月のことです。つまり、ブレジネフ書記長以降、彼らは“領土問題”として認めることすらしなかったわけですが、ゴルバチョフ書記長から「英知ある解決」という言葉を引き出すことができました》

 晋太郎氏はその後も総理・総裁への意欲を見せ続けたが、1991年5月に67歳で世を去った。最後の公の場での政治活動は、その1か月前に初代ソ連大統領として来日していたゴルバチョフ氏の歓迎昼食会だった。

《日本とロシア(当時はソ連)が真の友好国家たりえるためには領土問題の解決が不可欠であり、同時に日本にとっても、目標をしっかりと掲げて領土問題を解決していくことが、国としての「自立」につながっていくと父は考えていたんだろうと思います》

 奇しくもロシアのウクライナ侵攻の最中に凶弾に倒れ、父と同じ67歳で命を落とした安倍氏。死を予期していた晋太郎氏と状況はまったく異なるが、総理退任後も精力的に政治活動を続けてきた安倍氏は「晩年の父の覚悟」を重く受け止めていたのだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

釜本邦茂さん
メキシコ五輪得点王・釜本邦茂さんが語っていた“点取り虫”になる原点 “勝負に勝たなければならない”の信念は「三国志」に学んでいたと語る
NEWSポストセブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴行動画に批判殺到の花井組》社長らが書類送検で会社の今後は…元従業員は「解体に向けて準備中」、会長は「解体とは決まっていない。結果が出てくれば、いずれわかる」と回答
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
追悼 釜本邦茂さんが語っていた“理想の最期” 自身の両親のように「誰にも迷惑をかけず逝きたい」と話し、「葬儀ではマツケンサンバを」と笑顔で語る一幕も
NEWSポストセブン
ベッド上で「あー!」
《大谷翔平選手の“アンチ”が激白》「すべてのアンチに、アンチとしての覚悟を持ってほしい」地獄の応援芸・740km超えマラソンでたどり着いた“アンチの矜持”
NEWSポストセブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン
大神いずみアナ(右)と馬場典子アナが“長嶋茂雄さんの思い出”を語り合う
大神いずみアナ&馬場典子アナが語る“長嶋茂雄さんの思い出”「こちらが答えて欲しそうなことを察して話してくれる」超一流の受け答え
週刊ポスト
夜逃げした「郷土料理 たち川」に、食品偽装があったという(左はinstagramより、右は従業員提供)
「飛騨牛はホルスタイン、天然鮎は養殖モノ…」岐阜・池田温泉、町が委託したレストランで“食品偽装疑惑”「仕入れ先が減り、オーナー自らスーパーで割引の商品を…」【7月末に夜逃げしていた】
NEWSポストセブン
痩せる前のエヴィヤタルさん(インスタグラムより)
「弟はもはやガイコツ」「この穴は僕が埋葬される場所だろう」…ハマスが“人質が自分の墓を掘る”動画を公開し世界各国から非難噴出《飲まず食わずで深刻な飢餓状態》
NEWSポストセブン
本州に生息するツキノワグマ。体長120~180センチほど。最近では獣害の被害が増えている(イメージ)
《襲われる被害が多発》クマに悩まされる養蜂家たちが告白 「今年はあきらめるしかない…」「槍を作って山に入るヤツもいる」
NEWSポストセブン
デコラファッションで小学校に登校していたいちかさん、中学生となり衝撃の変貌を遂げていた…!
《デコラ小学生が衝撃の変貌》グリーン&ゴールド髪が“黒髪少女”に大転身「ほぼスッピンのナチュラルメイクで中学に登校する」意外な理由とは
NEWSポストセブン
昨年に第一子が誕生したお笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行、妻・沢井美優(右・Xより)
《渋谷で目立ちすぎ…!》オレンジ色のサングラスをかけて…ティモンディ・高岸、“家族サービス”でも全身オレンジの幸せオーラ
NEWSポストセブン