6月14日には洋子さんの94才の誕生日を三兄弟で祝った(写真は安倍氏のTwitterより)
日本の新たな“顔”に誰もが期待を大きくした。しかし、1年で内閣総理大臣の職を辞することになる。安倍氏の持病の潰瘍性大腸炎の悪化が原因だった。「無責任だ」と激しいバッシングが吹き荒れる中、夫の健康管理に対する「妻の責任」を問う声もあった。
臥薪嘗胆の日々を過ごした安倍氏は、2012年に自民党総裁に返り咲いた直後の総選挙で圧勝し、2度目の内閣総理大臣に就任した。2020年9月に退任するまでの総理在職日数3188日は歴代最長である。
いつもいつも私を守ってくれた
7月8日午前11時30分頃、奈良市の近鉄・大和西大寺駅前で遊説中の安倍氏を銃弾が襲った。直後、昭恵さんに一報が入る。身支度をする間もなく、黒いワンピースを上からかぶり、小さなバッグを片手に新幹線に飛び乗る。京都で近鉄線に乗り換え、奈良県立医科大学附属病院に到着したのは午後4時55分だった。
集中治療室でもない外科治療室のベッドに人工呼吸器をつけた夫が横たわっている。10人を超える医師がいるが慌ただしい様子はない。昭恵さんの到着と同時に医師たちは廊下へと移動する。
「晋ちゃん、晋ちゃん……」
そろそろとベッドに近寄り、手を握った。握り返してくれた、そう昭恵さんは感じたという。
「晋ちゃん、晋ちゃん、晋ちゃん、晋ちゃん!」
振り絞るように声をかけ続ける。しばらくすると、静かに「もう結構です」と医師に伝え、人工呼吸器が外された。午後5時3分に医師により死亡確認が行われるまで、到着からわずか8分間の別れだった。
こんなに優しい人はいなかった。いつもいつも私を守ってくれた──昭恵さんは葬儀で関係者にこう繰り返したという。最後に安倍氏が握り返してくれた手の感覚が薄らぐことはないだろう。
※女性セブン2022年7月28日号