生成りの色ならば明るく見えるという

「たった1度だけ着る服だからこそ」と思いを込める

 そんな言葉が、渡辺さんや新宮さんの力になる。次は、元気な赤ちゃんをしっかり産んでもらって、赤ちゃんと2人で退院する姿をお見送りしたいと思うのだ。

 日々、赤ちゃんの胎動を感じ、お腹の膨らみとともに成長を実感する。そんな毎日を送ってきた母親にとって、死産は受け入れがたい悲劇だ。もちろんエンジェルドレスを着て旅立ったからといって、悲しみが癒えるわけでも、すぐに前向きに生きられるわけでもない。だが、少しだけ想像してほしいのだ。死産に直面したときのことを。

 ガーゼにくるまれ、ステンレスの膿盆にのせられたわが子に対面するのか。きれいに清められ、かわいいエンジェルドレスをまとった赤ちゃんを抱っこするのか──しかし山本さんは、エンジェルドレスの必要性について、医療機関でもまだまだ認知されていないと指摘する。

 エンジェルドレス制作時、山本さんはクラウドファンディングで資材費などを調達した。出資者にはエンジェルドレスのサンプルを送り、アンケートに答えてもらった。看護師や助産師からの反応はよかったが、導入を具体的に検討する病院や産院はほとんどなかった。予算の問題や、死産した母親の精神的なケアへの無理解などがハードルになっていると山本さんは感じた。

「赤ちゃんをどう見送るかで、お母さんのその後の生き方が変わると思います。人の心はそれだけ脆くて、繊細です。逆に言えば、適切なサポートで、前を向けるきっかけをつくれるかもしれません」(山本さん)

 赤ちゃんをせめて抱っこしたい。かわいい姿で旅立ちを見送りたい……。子供を亡くした母親たちの切ない願いを受け止めた人たちの手により、エンジェルドレスは作られている。エンジェルドレスは、母親の悲しみを癒す手段でもあるのだ。山本さんは言う。

「想像もしたくないけど、死産は誰かが必ず直面する問題です。暗闇のなかにいるお母さんの存在に気づいた誰かが、適切なサポートのあり方を模索していくしかない。だから、私たちは、これからもエンジェルドレスを作り続けていくんです」

 わが子を亡くした母親の悲しみに心を寄せる女性たちの思いが、一筋の光となり、暗闇に差し込んでいた。

(了。第1回から読む

取材・文/山川 徹(ノンフィクションライター)

撮影/宮井正樹

※女性セブン2022年7月28日号

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