嫁いできて55年で「肩の荷がおりる」

左後ろから(和泉元彌のインスタグラムより)

後列左から采明、元聖、和秀、慶子。前列左から藤九郎、元彌、淳子。息子・娘・孫とともに、今も節子さんは狂言プロデューサーとしてまい進している(和泉元彌のインスタグラムより)

 節子さんの本業は狂言プロデューサー。長男の二十世宗家和泉元彌を中心として、初の女性狂言師となった長女・淳子(52)、次女の十世三宅藤九郎(49)らでつくる和泉流狂言の舞台をプロデュースしている。

「公演の依頼がありましたら、お祝いか不祝儀かをうかがって宗家(元彌)と話し合って演目を決定し、配役を決め、プログラムを組み……ということをしております。狂言は3日連続公演をするとしても同じものはやりません。毎日違う内容で組み立てねばならないので、頭も使うんですよ(笑い)。コロナの前は日本全国各地、海外も40都市で、1年の3分の1は舞台公演を行っておりましたから、おかげさまで忙しくさせていただいておりました」

 コロナ禍で狂言の舞台もいったんはストップし、じゅうぶんな活動はできなかったが、2020年7月からは神田神社(神田明神)「令和の間」で毎月1回公演を継続してきた。また、この5月には元彌と女優・羽野晶紀(53)の長女・采明(あやめ)と、長女・淳子の長女・慶子(きょうこ)が “成人狂言師”の証となる「奈須與市語(なすのよいちのかたり)」と「三番叟(さんばんそう)」を披(ひら)く、という慶事が行われた。

「孫は4人おりまして、采明と慶子は今年20歳で大学2年生。それから、宗家の長男の元聖(もときよ)が高校3年生で、淳子の長男の和秀が中学3年生。みな早朝と放課後に宗家(元彌)の厳しい稽古に励み、采明は去年12月に、元聖は一昨年、そしてこのたび慶子も一人前になりました。やれやれ良かった、という思いでございます。和秀も来年、成人狂言師としてお披露目する予定ですから、嫁いできて55年、半世紀過ぎたのだと自分でもビックリですけど、ようやくワタクシも肩の荷がおりますね」

 節子さん、満面の笑みだ。

「最初の子を懐妊したときはお舅さんから『宗家を継ぐ男の子を産んどくれ』と言われ、『はい、かしこまりました』と申し上げたものの女の子で、2人目も女の子で。3人目でようやく男の子だったときはお舅さんは大喜び、ワタクシもホッとしましたが、今もそんな心境でございます。でも、頼りになる女の子がいて本当に良かったと思っていますよ。今は独身の次女・藤九郎と2人暮らしですので、生活面でも安心です。かわいい孫にも恵まれ、娘、息子、孫と一緒にお稽古したり出かけたりしているとき、つくづく幸せを感じております。公演先に前のりし、宿泊先で過ごす時間にはのんびりさせていただいております」

 ちなみに、かつては結婚を反対した嫁・羽野との関係も良好なのだろうか。

「宗家と嫁はウチから車で20分くらいのところに住んでおりまして、孫のお稽古のために毎日孫を連れてウチに来ますよ。晶紀はお仕事が忙しいので毎日ではありませんが。でも、ああしなさい、こうしなさい、とは申しません。口出ししないと決めております」

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