「頑固ババア」と言われても
ところで、なぜ最近はあまりテレビに出ないのか。
「もう、いらなくなったんでしょう」
節子さん、意に介さぬ様子でこう笑った。もちろん冗談半分だ。
「少し前まで、朝の生活情報番組『ノンストップ!』で嫁姑問題を話し合うときに呼ばれていたのですが、時代がかわって嫁姑問題を扱うことが少なくなったんじゃないでしょうか。コロナでスタジオ出演できる人数も減りましたしね。そうすると、若い人の意見を代弁する方に、優先的に出演していただくことになりますよね」
テレビ局があちらこちらに忖度するため、出演者は発言を制限されることが多いと聞く。それで出演を拒否したり、出演できなくなったりした人もいるようだが、節子さんも自由に発言できなくなったせいで出番が減ったのではないのか。
「1度だけある番組で『こういうふうにコメントしてください』と言われたことがあります。でも、自分の言葉ではなかったので、自分の言葉に換えて発言させていただきました。ワタクシは“頑固ババア”と言われようと、調子のいいことは言えません。同調しすぎたら、自分が壊れてしまいます。それでも、共演者の方とケンカしたことはいっさいございませんよ」
自分を貫く“セッチー節”に、アンチがSNSなどで苦情を書き立てたのだろうか。
「全然気にしません。40、50歳ならまだしも、この年まで(この世に)おいていただくと、そんなヤワではいられません。人間世界ですから、いろんなことがあります。わかっていただけない方には『どうぞご自由に』というぐらいの気持ちでいますね。それに、忙しくて……次から次へとやることがいっぱいありますから、自分が抱え込む限界を過ぎたことはクシャクシャ考えないことにしています」
SNSの悪意の書き込みが原因で自殺者まで出ている現状をどうみているのか。
「人心がすさんでいます。心の教育が必要ではないでしょうか。ワタクシは学生時代、プロテスタントの学校に通いましたので、自殺はいけないんです。死んでしまったら生き返ることはできないし、死んで解決できることはありません。この世にうまれてきたからには、生きてどこまでできるか、それが大事だと思いますね」
80年を生き抜いた人はさすが、たくましい。
取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 写真/小倉雄一郎
◆舞台情報:8月27日、セルリアンタワー能楽堂で「和泉流宗家による狂言会 in shibuya〜大人も子供も楽しもう〜」を開催する。