スポーツ

【高校野球名門校の現在地】愛媛・松山商 2人の闘将が語る「4元号優勝」の浪漫

強力タッグで挑む澤田勝彦・顧問(左)と大野康哉・監督

強力タッグで挑む愛媛・松山商の澤田勝彦・顧問(右)と大野康哉・監督

 100年を超える歴史を持つ全国高等学校野球選手権大会、夏の甲子園大会で、大正、昭和、平成の3元号で日本一を経験し、令和で4つの元号での日本一を目指すのが愛媛県立松山商業高校だ。『甲子園と令和の怪物』(小学館新書)の著者であるノンフィクションライターの柳川悠二氏が、古豪・松山商の現在地をレポートする。

【愛媛 松山商】最後の甲子園出場/2001年 最高成績/優勝(1935年、1950年、1953年、1969年、1996年)

 高知商や高松商、徳島商など、かつて高校野球で絶大な人気と実力を備えた四国四商の中でも、夏に無類の強さを誇って“夏将軍”と呼ばれたのが松山商だ。

 延長18回を戦って0対0のまま引き分け再試合となった1969年夏や“奇跡のバックホーム”でサヨナラ負けを逃れた1996年夏など、松商が全国制覇を遂げる時はいつも劇的である。ゆえに、人々の記憶に鮮明に残ってきた。だが、大正、昭和、平成の3元号で日本一を経験している唯一の学校の松商も、春は1996年、夏は2001年を最後に聖地にはたどり着けていない。

 落日の名門の再建を託され、2020年にやってきたのが大野康哉。松商が低迷期に入った2000年代に、県内有数の進学校である今治西を率いた在任15年間で春夏あわせて11度もの甲子園出場を果たした愛媛の闘将だ。

「対戦校として松商を見た時に、それなりの選手がいて、よく鍛えられてもいるのに、とにかく本番で力を出せていない印象を受けていました。中に入って思ったのは、目標と実力が一致していないということです」

 グラウンドには「目標は日本一、目的は人間形成」の横断幕が掲げられている。

「素晴らしい理想ではありますが、日本一を目指すようなチームになっているのか。一勝の重みを指導者と選手が共有することが大事で、まずは『初戦突破』。それ以外の考えは捨てました」

 筆者は数年おきに松商を訪れているが、大野体制となった練習は、活気にあふれていた。だが、誰より声を張り上げるのが大野だ。そして練習が終われば1983年に建てられた「さくら寮」の寮監として、選手たちと寝食を共にする。

「私は選手を管理はしませんが、掌握はする。妻が作る食事を選手が食べている様子を眺めながら、選手の人間関係とかを観察して、気になることがあれば早めに間に入っていきます。この選手たちと、もう一度、甲子園の舞台に立てたなら、これ以上の浪漫はない」

 今年4月に大野は「化学反応を期待」して“奇跡のバックホーム”の時の指揮官である澤田勝彦を顧問に招いた。直後に開催された春季愛媛大会で優勝。秋夏を含め、県を制するのは実に17年ぶりのことだった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト