真剣な表情で試合前のミーティングに臨んでいたPL学園の「最後の部員」たち

真剣な表情で試合前のミーティングに臨んでいたPL学園の「最後の部員」たち

廃部問題の頃は、仮面をかぶっていた

 だが、私は彼にだけは近づこうとしなかった。いや、彼の心情を慮って近づけなかった。高校野球ファンの存続を望む声に耳を傾けず、廃部を断行しようという教団および学園と、「OBで現役コーチでありながらどうして野球部復活の声を教団に届けられないのか」というOBの声の板挟みに遭いながら、ただただ現役部員に寄り添うことしかできなかった千葉氏に、私のような人間が接近するのはためらわれたのだ。

 その一方で、どうして千葉氏が監督ではダメなのか──。そんな質問を校長監督や教団関係者にぶつけたこともあった。千葉氏は当時20代後半の若い指導者だったが、野球経験のない人物がユニフォームに袖を通すよりも、同校のOBでPL野球の真髄にも触れてきた彼の方がよほど監督にはふさわしいに決まっている。だが、私の意見を教団が聞き入れるはずもない。

 私は千葉氏と距離を置いていた。それゆえ、6年の時を経て、違うユニフォームを身に纏った彼と、まさか膝をつき合わせて話を聞くことになるとは、なんとも不思議な気分だ。

「廃部問題の頃は、私のもとにも新聞記者から問い合わせが常にありました。PLがあんな状況になっても、取り上げていただくことはとてもありがたかったのですが、組織の中にいる人間の振る舞いしかできず、私の独断で意見を言うことはできませんでした。私もPLのOBですから、先輩方が築かれてきた歴史のある野球部がなくなることに抵抗は当然ありました。でも、仮面をかぶっていました」

 コーチを務めた5年の間に、PL学園は2014年の夏を含め三度、大阪大会で準優勝した。

「校長先生が監督でも、大阪大会決勝で大阪桐蔭と勝負していたわけですから、ある程度の結果は残すことができていた。2015年夏まではOBの外部コーチもおられましたが、子供たちには、『校長が監督でも戦うぞ』『与えられた環境でやるしかないねん』と言うことしかできず、存続のためには勝ち続けるしかありませんでした」

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