「なんとしてでも自民党を復活させないといけない、神様の計画が失敗すると思って、八王子教会の教会員は萩生田議員を衆議院議員にさせること、自民党に政権交代させることは死ぬ気で取り組むべきことだと思い込んでいました。 選挙前は、月2回は来ていました」
20代の青春時代を八王子教会の青年信者として過ごした女性は、今の萩生田氏の弁明をどう見ているだろうか。
「萩生田議員の姿勢に悲しさや虚しさとかを覚えて、悔しいと思いました。報道陣への取材のたらい回し具合には誠意がなく、ただ隠れて逃げているだけだと感じました」
統一教会自体は反社会的な側面を多く持つ団体ではあるが、萩生田氏が実際に支援を受けてきたのはまっすぐな思いで萩生田氏を支えてきた青年信者たちだ。現政調会長は青年たちの真摯な活動や思いをなかったことにして“ポイ捨て”したということなのか。
これまでも同様のケースはあった。ある都内の区議会選挙で同様に政治家から青年信者たちを使い捨てされた青年部ビデオセンターの所長に心境を訊いたことがある。所長は諦めの感情を吐露し「うちの団体は評判悪いから仕方ないよね」という諦観を示した。
「萩生田さんが来る時は、いつも礼拝で回しているビデオを録画しないように、当時の教会長から指示がありました。 政治家が礼拝堂に来る時は録画しないように言われていました」
直接、映像や画像という“証拠”が出てきていないためか、強気の弁明を行なっている萩生田氏。
「私は元信者の立場で告発しているだけにすぎず、下手したら証拠もないただの嘘つき扱いになりかねませんが、私は内部からの証言を行う勇気ある人がいると信じたいです」
最後に改めて萩生田氏についてどう思うか訊いてみた。彼女は一瞬の間をおいてこう呟いた。
「ダッセーな、と」
萩生田氏の事務所へ一連の疑惑について質問書を送ったが、期限までに回答は得られなかった。
第2次岸田改造内閣で経産相から外されることが濃厚となった際、「俺は骨格じゃなかったのか」と不満を見せていた萩生田氏。自民党政調会長に就いた今、統一教会との関係において「骨格」となっていくのか、注目されるところだ。
取材・文/鈴木エイト(ジャーナリスト)
【プロフィール】
鈴木エイト(すずき・えいと)/滋賀県生まれ、日本大学卒業。2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表、主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め、「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかにカルト宗教の2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行なう。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)、『日本を壊した安倍政権』(扶桑社)。9月に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)を発刊予定。