芸能

齋藤孝氏が分析する井上陽水の歌詞 その言葉の力、恐ろしいほどの完成度

小学生の頃から“陽水ワールド”が大好きだったという明治大学文学部教授の齋藤孝氏

小学生の頃から“陽水ワールド”が大好きだったという明治大学文学部教授の齋藤孝氏

 時代を超えて愛され、今も胸に刻まれる曲を数多く発表してきた井上陽水(73才)。彼を語る上で避けて通れない独特な歌詞は、“言葉のプロ”も魅了する。明治大学文学部教授の齋藤孝氏も、熱心な陽水ファンの1人だ。

 * * *
 陽水さんの楽曲を初めて聞いたのは小学生の時です。兄が『陽水II センチメンタル』(1972年)と『氷の世界』(1973年)の2枚のLPアルバムを買ってきて繰り返し家の中でかけていたので、この2枚の曲は自然と全部憶えてしまいました。当時から「こんな歌詞を作る人がいるんだ!」と驚きがありました。

 小学生の頃から“陽水ワールド”が大好きでしたが、18歳で東京に出てきて浪人生活を送っていた時にとりわけ心に沁みた1曲があります。それが『陽水II センチメンタル』の冒頭の『つめたい部屋の世界地図』です。

 私は当時、静岡の家族や友人と離れ、アパートでひとり暮らしをしていました。孤独な状況の中で遠い世界への憧れが広がっていく歌詞が、何もできない状況なのに「はるかな世界へ旅立っていきたい」との思いが広がっていく自分の状況にぴったりでした。

「船」という歌詞がまたよかった。陽水さんの曲の歌詞には「船」がよく出てきます。飛行機や電車ではなく、大海原に浮かぶ船自体が孤独を感じさせます。東京という大海原でアパートの1室が船みたいに揺れているように感じていた私の心象風景に重なり、美しい表現と攻める歌詞の両方に惹かれ、この曲をよく聞いていました。心がしっかり癒されていくと同時に、自分を奮起させてくれた作品です。

 陽水さんの歌詞がもたらす想像の広がりは尋常ではありません。私の脳に常に刺激を与えてくれた存在であり、陽水さんの言葉の力に大きな影響を受けてきたと思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

雅子さまが三重県をご訪問(共同通信社)
《お洒落とは》フェラガモ歴30年の雅子さま、三重県ご訪問でお持ちの愛用バッグに込められた“美学” 愛子さまにも受け継がれる「サステナブルの心」
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
「とにかく献金しなければと…」「ここに安倍首相が来ているかも」山上徹也被告の母親の証言に見られた“統一教会の色濃い影響”、本人は「時折、眉間にシワを寄せて…」【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン