「弱肉強食の世界」という共通認識
その『ひょうきん予備校』で、横山やすしはダウンタウンやダチョウ倶楽部、野々村真など若手の前でこう話していた。
「人生、この先輩は疲れてるなあという先輩の言うことはまず聞かないこと。なんやかんや言うたって、我々の社会いうのはね、売れたら優遇されるけども、売れないほどこの世界で一番惨めなことはない。そこにおるんか?とも言うてくれないし、350円の幕の内弁当で片付けられてしまうし。
勝負の世界に入ってきてるんやから、勝てば官軍という言葉が未だに根強く生きてる限りはこの世界ではやっぱり、ヒットせないかん」
異常に勝ち負けにこだわったやすしの人生哲学を感じ取れる言葉が並んでいる。松本は『遺書』の中でこう綴っている。
〈お笑い芸人を目指しているヤツ、または目指しきれていないヤツ、よく聞け!
芸人は、サラリーマンではないのだ!
上司に可愛がられれば、それなりに出世もするだろう。しかし、この世界では、一人ひとりが社長なのだ! その会社をどう大きくしていくかという弱肉強食の世界なのだ、バカヤロー!〉
横山やすしはテレビのプロデューサーにもマスコミにも決して媚びなかった。松本人志もおべんちゃらを使わずに実力でトップに上り詰めた。そして若者にメッセージを発する際、ともにお笑い界は弱肉強食であると訴えた。笑いを取らなければ蹴落とされていく厳しい世界で戦う2人のカリスマ芸人の気構えには、共通するものもあるのではないだろうか。