実はプロのドライバーが運転していないことが多い送迎バス(イメージ)
「園長さんが運転したそうですが、プロでない者が仕事でたくさんの子供を乗せて運転できてしまうことにも疑問です。人手不足なのはわかるのですが」
勘違いしている人もいるが、幼稚園や保育園、障がい者施設などの福祉送迎車は不特定多数に対する有償旅客輸送ではないため、いわゆる2種免許は必要ない。道路交通法第86条「旅客自動車であるものを旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で運転しようとする者」でなければ必要ない。これは学校の部活や工場の送迎、葬儀社のマイクロバスなどもそうだろう。
「多くは日産のシビリアンとかトヨタのコースターとか、マイクロバスですね。中型免許で乗れますから、若い人以外は自動車免許を持っていれば幼稚園でも障がい者施設でも、子供を20人とか乗せて送迎できますよ」
2007年6月1日以前に普通自動車免許を取得した人は、現在新規で取得する場合よりも簡便な学科試験なしの審査で得られる限定解除さえとれば、中型免許で車両総重量7.5t以上11t未満、最大積載量4.5t以上6.5t未満、乗車人数11人以上29人以下の車両を運転することができる。「若い人」というのはそれ以降の免許取得者は取得年次による制限があり、普通自動車免許では運転できない車両が多い。免許制度の細分化は本旨ではないため割愛するが、これが現在、中高年およびシニアドライバーが重宝がられる理由でもあり、将来的な物流問題が懸念される理由でもある。
「実際は専業ドライバーでなく、今回のように職員が運転する園や施設も多いです。免許さえあれば、誰が運転してもいいのですから」
それまで小さな軽自動車しか運転してこなかった人でも、園や施設が採用したならば、運転しなければならなくなればいきなりマイクロバスでたくさんの園児を送迎できる。実際に求人を見ると大半は「経験者」および「運転の仕事をされていた方」とあるが、中には「シニア・未経験者歓迎」という園や施設もある。
「仕方のない話なのかもしれませんが、プロからすると怖いと思います」
ただでさえドライバー不足の昨今、その労働環境や低賃金が問題となっているが、だからといって2種免許を必須にするなどして、多くの児童や障がい者の送迎に支障をきたすわけにもいかない。まして今回の場合、送迎車はごく普通のワゴン車であり、年齢に限らず普通免許さえ持っていれば誰が運転してもいい。
もちろん、必ずしも未経験者だから、シニアだから今回のような事故を起こすとは限らない。同じく労働環境や低賃金が原因の幼稚園や保育園の教師、保育士の不足もある。プロドライバーはそれを「怖い」と思うのだろうが、そもそもこうした状況を放置しているのは国であり、難しい問題だ。
