国内

玄侑宗久氏 安倍氏国葬「弔意は求めないが予算は使う」に大いなる矛盾を感じる

僧侶の玄侑宗久氏は安倍氏国葬をどう考える?(時事通信フォト)

僧侶の玄侑宗久氏は安倍氏国葬をどう考える?(時事通信フォト)

 安倍晋三・元首相の国葬について多くの国民から反発の声があがっている。この問題について僧侶の玄侑宗久氏(66)に意見を聞いた。

 * * *
 安倍元首相の葬儀は7月12日に増上寺(東京・芝公園)で済んでおり、浄土宗の戒名(紫雲院殿政譽清浄晋寿大居士)も戴いている。つまり仏教のお弔いは済んでおり、国葬を執り行なうと言われても、僧侶である私は「イメージが湧かない」というのが率直な感想だ。

 仏教の世界では、近親者のみで執り行なう「密葬」、大勢の参列者を受け入れる「本葬」がある。増上寺での葬儀が密葬であれば、その後の本葬はあり得るだろう。しかし、増上寺には集まれる限りの人が駆け付けて弔問を済ませており、これは本葬と考えるべきものだ。

 本葬の後で儀式をやるとなれば、宗教抜きのお別れの会が一般的。実際、予定されている国葬は無宗教なので、国家予算を使って“国葬という名のお別れの会”をやるという感じなのだろうか。

 また、国葬という言葉は、国民の多くが悲しみを共にするという意味合いを想起させる。ところが今回は野党側から「弔意の強制になる」と責められると、岸田首相は「弔意の表明は強制しない。喪に服することも求めない」と回答した。

 国家の儀式として行なう「国葬」であれば、予算は全面的に税金から出してもやむを得ないというもの。しかし、野党に批判されたとはいえ、「弔意の表明や黙祷なども求めない国葬」となると、いったい何のための「国葬」かと思わざるを得ない。

 自民党が「関係を断つ」とまで言っている旧統一教会系団体と深く関係していた安倍氏を、国を挙げての葬儀にするという点にも矛盾を感じる。

 振り返れば、岸田首相が国葬を早々に閣議で決定した時も、(法令上の根拠がなくても政策を決めることができる)閣議決定を最大限に利用するのが、安倍さん以来の自民党政権の伝統のようなものかと思わされた。

 今からでも、「閣議決定で国葬を決めたことは勇み足だった」と謝って、佐藤栄作元首相の時の国民葬や、中曽根元首相らと同じ合同葬などとして執り行なえばいい。

「国民に喪に服するなどのご迷惑はおかけしません。勝手にやるけれども、予算だけはいただきます」──そんな国葬の前例は作るべきではないと思う。

※週刊ポスト2022年9月30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」