工作資金を捻出か
JOC会長時代の竹田といえば、五輪の招致段階からきな臭かった。国際オリンピック委員会(IOC)メンバーに対する裏工作などは、その最たる疑惑だ。前号(週刊ポスト2022年9月30日号)に書いた通り、東京五輪が決まった2013年、2度にわたって元国際陸上競技連盟(IAAF)に対する現ナマ工作が展開された。招致委員会が陸連関係者に2億5000万円を振り込んでいた事実が発覚し、竹田が責任を取ってJOCの会長を退く事態に発展している。
おまけに、この話には続きがある。同じ2013年、招致委員会がアフリカのIOC票を獲得するため、一般社団法人「嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」を使って工作費金を捻出したのではないか、という疑いが浮上する。のちに2020年2月20日号で週刊新潮が〈「森喜朗」新財団が呑み込む「嘉納治五郎財団」の五輪買収「5億円」疑惑〉と題して報じた。官房長官だった菅義偉がパチンコ大手「セガサミーホールディングス」会長の里見治に、IOC買収資金として森が代表理事を務める嘉納財団への寄付を依頼していたというのである。
当事者たちは買収の意図を認めなかったものの、改めて聞くと、セガサミーは「当社が取り組むスポーツ振興活動の一環として同財団への寄付実績がございます。なお、里見個人からの寄付行為はございません」(広報室)と寄付の事実を認めた。一連の裏工作の一部は仏検察が捜査して立件したが、日本では疑惑の蓋が閉じられ、うやむやのままになってきた。
今回の五輪汚職のADKルートで、その高橋や森、竹田との関係が改めて浮かんでいる。高橋の呼びかけに応じ、森やKADOKAWAの首脳たちが集った2017年5月の東京・赤坂の料亭会談にも、IOC委員の裏工作に奔走した元電通スポーツ局長が登場している。捜査関係者が続ける。
「ADKと高橋の関係は、五輪招致の裏工作当時から始まっていると見ていい。高橋のコモンズがADKとコンサルタント契約を結んだ時期が2013年7月。JOCの招致委員会が国際陸連のパパ・マッサタ・ディアクに1回目の工作資金を振り込んだのと同じ月です。高橋は一方で電通を使ってIOCに工作を仕掛け、もう一方でADKからコンサル料をとるようになった」
国際陸連関係への2度目の振り込みは2013年10月だ。
「9月のIOC総会で東京五輪の開催が決定しましたから、そのひと月あと。これは事後の謝礼にあたる」(同捜査関係者)