都の女人らしい色柄の衣をまとっているが、サラサラとは違ってどっしり感のある長い黒髪、くっきりした顔立ち、見るからに発言力がありそうな雰囲気を漂わせる兼子。似せ絵が得意な上皇が描いた兼子の顔には、高々とした巨大な鼻が。上皇によると彼女はその絵を「破いて出て行った」らしい。
史実でも上皇に信頼され、取次係となった兼子は、多くの者から取次を頼まれ、権力と富を得たという。持ち前の政治力を発揮し始めた兼子は、ドラマの終盤、あの北条政子(小池栄子)と対決!? シルビア藤原兼子VS小池北条政子。考えただけでスタジオに火花が飛びそうだが、最強の乳母がどう出るか。どちらも三谷作品には欠かせない俳優だけに、ふたりの動きは楽しみだ。
考えてみると、道は頼家の乳母でなければ、野心が違う方向に向かっていたかもしれない。実衣は頼朝の異母弟の全成(新納慎也)とおとぼけ夫婦のような感じだったのに、全成が父・時政(坂東彌十郎)に頼まれて頼家の呪い人形などを作ったおかけで謀反を疑われて、殺されてしまう。都で仏の道にいた息子まで殺されたのだ。そりゃ、人格も変わろうというものである。
比企尼にしても、頼朝の平家討伐を喜んでいたのに、結局、北条に能員も道も一幡までも一族もろとも滅ぼされるという悲劇に見舞われる。その後、妖魔のような姿になって現れ、頼朝の孫である源頼家の遺児・善哉に「北条を許してはなりませぬ!」と呪いのような暗示をしたのは、最後の“乳母力”だったのだろう。
誰の乳母になるかで運命が決まる。この不思議も『鎌倉殿の13人』の見えない操り糸なのだ。