2019年7月、経済産業省が開催した「多様なモビリティー(移動手段)の普及促進のための展示・試乗会」で、電動キックボードに試乗する世耕弘成経済産業相(当時、時事通信フォト)
将来的には2022年4月に可決成立、公布された改正道路交通法による「特定小型原付」という新たな定義によってさらに自由化が進められる。整理すると、
・従来の電動キックボード(原付扱い)
要原付免許以上、要ヘルメット、制限速度30km/h、二段階右折義務あり
・シェアリングサービスの電動キックボード(現時点)
要小特免許以上(原付免許のみは不可)、ヘルメット不要(推奨)、制限速度15km/h、二段階右折義務なし(小回り右折)
・特定小型原付の電動キックボード(改正道路交通法施行後、2024年4月ごろか)
運転免許不要、ヘルメット不要、制限速度20km/h、二段階右折義務あり、一定の条件下で歩道走行および逆走可。
以上、おおよそ3通りの区分けとなる。特定小型原付はまだ施行されておらず(公布と施行は別である)、将来的な予定なので注意が必要である。現状はいかなる電動キックボードも公道を無免許で運転してはならない。
ヘルメットを持ち歩く人なんていませんから
それにしても、なぜ特定の電動キックボードのみノーヘルが許されるのか、筆者には不思議でならない。そもそも原付免許で乗れるはずの電動キックボードがシェリングサービスでは原付免許のみでは不可、というのもよくわからない。原付はヘルメット必須だから小特に無理やりした感もある。
ちなみに小特とは、毎時15kmを超える速度を出すことができない構造の車両、かつ車両の長さ4.70メートル、幅1.70メートル、高さ2.00メートル以下の規格の車両で総排気量1500cc以下の車両を指す。ゆえにシェアリングサービスの電動キックボードは制限速度15km/hとなっているのだが、特筆すべきはシェアリングサービスの電動キックボードは小特扱いなので二段階右折が不要なのである。便利とみるか、危険とみるか。
大手バイクショップチェーンの幹部に尋ねてみたが、意外な回答があった。彼は実際に業界団体の説明会などにも足を運んでいる。
「ヘルメットを被りたくない人が多いからノーヘルにしたい、というのが本音ですよ。電動キックボードを普及させたい国としては利用者の安全より利便性をとった。ノーヘルであることを優先して小特の区分にねじ込んだ。先行する韓国の二の舞いは嫌だったのでしょう」
パーソナルモビリティ先進国の韓国では2021年5月13日からシェアリングサービスの電動キックボードにヘルメットの着用が義務化され、罰金の対象となった。あまりの事故の多さにやむを得ず改正することになった格好だ。
「しかし韓国ではヘルメット着用が義務化されてから、電動キックボードのシェアリングサービスの利用が大きく落ち込んだのです。ヘルメットを被るなら使わないと半分近くに落ち込みました」