韓国、ソウルで電動キックボードに二人乗りする男女。2021年。急速に普及したもののヘルメット着用義務化に伴いシェアリングサービスでは需要が急減(AFP=時事)

韓国、ソウルで電動キックボードに二人乗りする男女。2021年。急速に普及したもののヘルメット着用義務化に伴いシェアリングサービスでは需要が急減(AFP=時事)

 韓国の業界団体の調査によればヘルメット着用義務化によって電動キックボード業者の売上や利用者は一時30%から50%も減ったとされる。

「ヘルメットを持ち歩く人なんていませんからね、髪型を気にして嫌がる人もいるでしょうし、蒸れるとか、単に面倒とかって人もいます。これを日本政府も、日本の業界団体や企業も気にしたのでしょうね。あとはインバウド、外国人観光客に気を使った部分もあるのでしょう」

 国情やレギュレーションの違いもあるため比較はできないが、ヘルメットの着用義務がない、もしくはゆるい国は多い。

「対して警察はヘルメットを義務化したかった。行政も事故の増加は避けたかった。しかし国と業界は普及の妨げになると特別扱いで小特にねじ込んで推進した。後者が押し切った形ですね」

 警視庁は当初からノーヘルに懸念を示していた。繰り返される電動キックボードによる違反行為に対して集中的な取り締まりも続けた。また業界団体にも対策を要請している。行政もまた、今回事故のあった中央区も2022年5月16日に以下の要望書を提出している。

〈本区は、銀座や京橋、日本橋などの商業・業務が集積し、路上パーキングが多いことや、一部地域では歩行者天国が実施されるなどの地域特性があり、限られた道路空間に新たな交通主体が加わることにより、交通事故の増加などを懸念しております。
 本区といたしましては、特定小型原動機付自転車に関して、交通事故の危険性が高い道路空間には通行禁止区域を設ける等の必要があると考えております。つきましては、改正道路交通法の施行に当たり、各警察署が地域町会の意見を取り入れ、地域特性に配慮するなど、より柔軟に交通規制の対応ができる制度となるよう要望いたします〉

 この中央区の懸念通り、同区が電動キックボードのシェアリングサービス死亡者第1号となってしまった。やはり見切り発車による公道実験とサービスが混乱を招いている。

人身事故だったらと思うと怖い

「決まったことなので仕方がない話ですが、私もバイク乗りですから、個人的にはヘルメット着用は義務化すべきだと思います。15km/hだって打ちどころが悪かったら死にますよ。何でも死ぬと言われればそうですけど、ヘルメットをちゃんと被って助かる人は本当に多いのです。自転車だってそうですよ」

 警視庁によれば、自転車の交通事故で死亡した人の約6割が頭部の致命傷によるものだとしている。また致死率もヘルメットの着用者に比べて2.2倍となっている(2017年~2021年統計)。自転車は13歳未満を除けばヘルメットの着用は努力義務となっているが、電動アシスト自転車などは24km/hまではアシスト機能が効くように設計されているわけで、自転車のヘルメット着用に対して国や全国の自治体が力を入れている意味がよくわかる。それなのに電動キックボードとなるとノーヘルにこだわる、本当に不思議な話である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン