野菜と果物(GettyImages)

野菜と果物を積極的に摂りたい(写真/GettyImages)

 牛や豚の赤身肉を避けて、エクストラバージンオリーブオイルやDHAやEPAといった良質な油を積極的に摂取することも効果的。

「エクストラバージンオリーブオイルや魚をよく食べる地中海沿岸では、大腸がんにかかる人が少なかった。腸にいいのは『地中海食』です。赤身肉に含まれる飽和脂肪酸は大腸がんのリスクを高める一方で、魚の油であるDHA・EPAは炎症を抑制してがん予防になる。エクストラバージンオリーブオイルに含まれるポリフェノールも、抗酸化作用があり、予防に有効だと考えられています。

 良質な脂質は便秘を改善する働きもあります。毎日、スプーン1杯を目安にオリーブオイルを摂れば、大腸内で“潤滑油”として機能し、便の流れがスムーズに整います」(松生さん)

 食生活の改善に加え、適度な運動も必須だ。

「日本人は座っている時間が世界的に見ても長く、1日に7時間といわれています。しかし座ったままでいる時間が長いほどにがんリスクが増えるというデータがある。ウオーキングなどで体を動かすことを推奨します」(中川さん)

 国立がん研究センターで長年にわたって日本人のがんの研究に取り組んできた、がん対策研究所予防研究部長の井上真奈美さんは、肥満は乳がんのリスクも高めるため、体形を保つためにも運動は大切だと、アドバイスする。

「肥満度が上がるに比例して乳がんの罹患リスクも増加します。欧米では閉経前の女性は、やせている方が乳がんのリスクが高いが、日本人は年齢に限らず、肥満がリスク要因となることが明らかになっています」(井上さん)

 まずは、いまよりも10分長く運動することから始めよう。がん予防研究のトップエキスパートである井上さんも忙しい仕事の合間を縫って体を動かすことを意識している。

「学生時代はテニスに打ち込み、就職してからもずっと何らかの運動を続けています。フルマラソンを走ったこともあります。いまはフルマラソンとまではいきませんが、ジョギングやヨガも取り入れて、適度に体を動かすようにしています。女性は特に、更年期以降は筋肉が落ちやすくなるのみならず、女性ホルモン量の変化により太りやすくなるため、運動習慣を心がけた方がいい」(井上さん)

 予防とともに取り組むべきは、定期的にがん検診を受けること。井上さんは日本人の受診率の低さを危惧する。

「特に乳がんと子宮頸がん検診の受診率が低い。アメリカやイギリスの受診率は約8割ですが、日本は4割に留まっています」(井上さん)

 ただし、やみくもに受けるのは逆効果だ。

「要注意なのは全身のがんが見つかるという触れ込みの『PET検査』。日本では人間ドックで高額を支払って受ける人が少なくありませんが、海外でこれほど普及している国はありません。PET検査で早期のがんが見つかることはまれで、検便で見つかるような大腸がんが見逃されることすらある。PET検査を受けているからと自治体のがん検診をパスする人もいますが、まずは無料で受けられる自治体の基本的な検診を優先してほしい」(中川さん)

 検診を受けて自分の体と向き合いつつ、がんに関する正しい情報を集めることも怠ってはならない。

「いちばんの予防法は、正しい情報を知ることです。欧米ではずいぶん前から、学校で子供にがんに関する正しい知識を教えていますが、日本では誤った知識や迷信を信じている人が多い。情報次第で助かる命があることを、忘れないでほしい」(中川さん)

 検診と情報収集についてだけは、欧米のスタンスに倣うのが正解のようだ。

(了。前編から読む)

※女性セブン2022年10月27日号

日本人のがんの変遷

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