「過去に私が勤務した老人ホームで喫煙者と非喫煙者の生存曲線を比べたら、65才を超えると生存率はほぼ変わりませんでした。喫煙でがんや心筋梗塞になる人は、施設に入る前にすでに亡くなっている可能性が高いからです。
逆に施設に入る時点で何十年も喫煙しているのにがんにも心筋梗塞にもなっていない人は、たばこを吸っても危険ではない体質である可能性が高い。よって、高齢喫煙者が無理にたばこをやめる必要はなく、むしろ禁煙のストレスが健康を害する恐れがあります」
これまで紹介してきた和田さんの主張から見えてくるのは「がまんをしない」という信念に基づく人生観だ。
「日本人は節制やがまんを美徳と考えがちですが、ストレスを避けて免役機能を高めるには、思い切り人生を楽しむことが大切です。確たる証拠のない健康常識に従ってストレスをためるのではなく、嫌なことはなるべくやらず、楽しいことを優先する生き方があってもいい。それが私の思う真の健康術です」
医者と病院を盲信するのではなく、自分に合ったストレスのない健康法を選びたい。
【プロフィール】
和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年6月7日生まれ、大阪府出身。東京大学医学部卒業後、東大医学部附属病院精神神経科、高齢者専門の浴風会病院、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、11月よりルネクリニック東京院院長。30年以上にわたり、高齢者医療の現場に携わる。著書『80歳の壁』がベストセラーに。
※女性セブン2022年11月10・17日号