ライフ

コロンブスが欧州に持ち帰り、バスコ・ダ・ガマがインドに… 梅毒を世界へ広めた航海と戦争

梅毒が世界に広がった背景とは(イラスト/斉藤ヨーコ)

梅毒が世界に広がったことと、航海者たちの関係は(イラスト/斉藤ヨーコ)

 人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、梅毒が世界に広がった歴史についてお届けする。

 * * *
 15世紀末、突然ヨーロッパに現われた梅毒は、コロンブスの新大陸からの手土産であったという説が有力です。これを直接、証拠立てる確証はないのですが、ヨーロッパへの感染拡大と新大陸発見の時期が合うこと、15世紀以前のインディオの骨に梅毒とみられる病変があること、一方、ヨーロッパの人骨にそれが見られないことなどが根拠としてあげられます。

 1492年、クリストファー・コロンブスはイスパニョーラ(現ハイチ島)にたどり着きます。スペインの支援を受けて、彼はアフリカ沿岸を通らずにアジアに到達する西方航路を目指していました。マルコ・ポーロの描いた黄金の国ジパングへの道は夢の航路、豊かなアジアへの憧憬の道。コロンブスの最初の航海は90名の乗組員と共にパロス港から出航、2か月をかけてバハマに到達。ここを目的地のアジア・インドと勘違いしたコロンブスは原住民をインディオ(インド人)と呼びました。さらに南下した一行はキューバ、ハイチに上陸。長い船旅に禁欲生活を強いられた乗組員たちは、現地の女性と性交渉を持ち、梅毒に感染したと考えられています。

 そして、凱旋帰国したコロンブスがバルセロナで女王に謁見している間にも、船員たちは街に出て娼家に立ち入り、梅毒の病原菌を根付かせることになったのです。航海を終えた船員たちは報酬を受け取っては、次の仕事を求めて各地に散り、戦争が日常茶飯事であった当時、傭兵として戦地に赴いた者も多く、梅毒はヨーロッパへ確実に根を下ろしていきます。

 1494年にフランス王シャルル八世(24歳)は、当時スペインの支配下にあったナポリを手中にするためにヨーロッパ各地から募った傭兵を率いてローマに入城。しかし、このときすでにスペインでは梅毒が流行の兆しを見せ、ナポリに駐在する兵士の多くはスペイン人でその周りにはスペイン人の娼婦が数多くいました。シャルル八世とフランス、オランダ、スイスからの混成部隊の傭兵らは、ローマからナポリに到着。さしたる戦いもなくスペイン人娼婦と交流したため、一気に傭兵らに梅毒が拡がり、この奇病のために壊滅する部隊も出ました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
2才の誕生日を迎えた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
【9月6日で19才に】悠仁さま、40年ぶりの成年式へ 御料牧場、小学校の行事、初海外のブータン、伊勢新宮をご参拝、部活動…歩まれてきた19年を振り返る 
女性セブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン