別の薬に切り替える
同様に、心拍数や血管拡張を抑制することで血圧を下げる働きをするβ遮断薬、尿の排出を促すことで流れる血液の量を抑え血圧を下げる利尿薬も、結果的に陰茎に流れる血液の量を減らすため、勃起しにくくなる副作用が考えられるという。
「薬を飲み始めてから症状が出たと自覚できるなら、別の降圧剤への切り替えが検討できる場合があります。たとえば、ARB(アンジオテンシンII 受容体拮抗薬)はカルシウム拮抗薬や利尿薬に比べて降圧作用がマイルドで、EDが起こりにくいと言われます。他の降圧剤に比べて薬価が2倍ほどと高くなりますが、医師に変更可能かを相談するとよいでしょう」
糖尿病患者は、服薬だけでなく、自身の体調管理によっても影響が出る。
「糖尿病とEDは関連性を指摘されており、そもそも糖尿病の合併症としてEDを発症するリスクがあります。それに加えて、血糖をコントロールする糖尿病治療薬のなかにも勃起不全の副作用が記載されているものがあるので注意が必要です」
高コレステロールのための治療薬にも、添付文書の副作用欄にEDが記されている薬が多い。
「高脂血症治療薬を飲んでいるのは40代以上の中高年男性が多いと推測されますが、その年代は男性の更年期障害などが始まるタイミングでもある。そうした時期に重なって、薬のコントロールが十分でなければ、EDの症状が出現する確率は高まると言えます」
40代から注意をしていくことが、その先20年、30年とセックス寿命を延ばすことにつながるのだ。
胃腸薬も注意が必要だ。
「胃酸の分泌を抑制するヒスタミン受容体拮抗薬(H2ブロッカー)は、男性ホルモンの働きを抑制する抗アンドロゲン作用があり、EDになる可能性が考えられます」
心療内科・精神科系の疾患に用いられる抗精神病薬にも、副作用としてEDを持つものがある。
「神経に作用する抗精神病薬も、薬剤性EDにつながりやすい薬の筆頭です。ただ、抗精神病薬の服用が必要な症状に悩む患者さんの場合は、薬剤性EDに加えて、心因性EDの影響も少なくないと考えられます」
治療のための薬がセックス寿命の妨げにならないよう注意したい。
※週刊ポスト2022年11月18・25日号