前田晃伸・NHK会長(写真/共同通信社)
何が公平なのか?
NHKは調べていないとするが、推計はできる。
かつて総務省の家計調査で世帯主の年齢別にNHK受信料の支出額を調査していた。それによると、ざっと20年前(2000年)の時点で「60歳代」の平均支払い額が年間1万6629円だったのに対して、「30歳未満」は半分の8626円。受信料は同額なので、当時すでに60歳代で受信料を払っている世帯の割合は、30歳未満の世代より2倍多かったことを物語る。
現在は調査項目に含まれていないが、若者のネットでの動画視聴=NHK離れが進んでいることから見て、世代による支払い率の差がもっと開いていると考えられる。
日本では65歳以上の高齢者がいる世帯が全体の5割を占めているにもかかわらず、紅白の若者偏重は番組の公平性の点からも疑問がある。
だが、NHKはそうは考えていないようなのだ。前出の大野氏の指摘。
「受信料は番組を見た人から取るのではなく、番組を見ようが見まいが電波を受信している人全体に公平に負担してもらう仕組みです。だから高齢者からいっぱい受信料をもらっているからといって高齢者向け番組を多く作るわけではないというのが建前です。とはいえ、かつてはNHKの上層部や番組編成部門の幹部は『NHKは高齢者をマークしておけば大丈夫』といい、高齢世代に目配りする方針が確かにあった。現在は当時より高齢化が進んでいるのに、それが変わりつつある。
紅白にしても、今の中高年の人たちが聞きたいであろう音楽が少ないことは確かだと思います。たとえば、団塊以降の世代はビートルズ世代で、演歌よりニューミュージックと言われたフォークやロック系の歌手、吉田拓郎とかアリスとかを聴いていた。その辺りの世代の音楽をもっと増やしていいのではないか」
11月24日の定例会見で局側は「(視聴者から)ご期待のあるアーティストには引き続き交渉しています」と説明したが、どうなるのだろうか。
※週刊ポスト2022年12月9日号