少年を手にかけるよう促されるシーンでは「できねぇ」ともつぶやく(C)NHK
多くの登場人物の命を奪う善児だが、中でも圧巻だったのが第32回で、源頼家の長男・一幡を殺めようとするシーンだ。年端も行かない一幡少年を、善児はいったん自宅に匿う。北条義時は「あれは生きていてはいけない命だ」と葬ることを促すが、善児はひとこと「できねぇ」とつぶやく。主である義時からその理由を問われた善児は、目に涙を溜めて「ワシを、好いてくれている」と言うのだ。
「台本を読んだ後に、『できねぇ』の一言を口にするまでの善児の気持ちを想像してみました。そのために一幡様を自分の家にかくまってからの日数を史実と照らしあわえて数えてみたんです。どうやら2週間くらい一緒に過ごしたようなんですね。その間に山に連れいったり、そこで木の実や虫を採ったり。そんなことをしたんだろう。そうしているうちに愛情が湧いてきたのかなぁとか……。
多分、はじめは“家の隅にでも置いておけばいい”くらいに思っていたのに、向こうから善児に懐いてきたんだろうな。だからそれでまた、ひとつ、ふたつ、善児の気持ちがぶれてきて、ブランコまで作って遊ばせる。なのに義時様は殺せと言う。そこで『できねぇ』というセリフにつながったんですね」
そうした強烈なキャラクターを作り出した三谷幸喜氏との出会いについて、梶原さんはこう振り返る。
「若いころ、映画とかテレビとかで役がつく人になりたいなっていう気持ちがあって東京に来ていたのだけど、どうすればそうなれるのかわからずにいた。そんなとき、友人に紹介されて三谷さんに会って話をする機会があったんです。その後、いきなり電話がかかってきて、次の舞台に出てみない?って言われたので、『はい、出ます』って(笑)。
初めての舞台の1年後くらいに、また電話がかかってきて、次のにも出る?って聞かれたので、また『はい、出ます』って、そんな感じでしたよ。その後、東京サンシャインボーイズで舞台の経験を重ねて、だんだんテレビ番組の再現ドラマなんかにも呼ばれるようになってきて、初めて役名がついたテレビドラマも三谷さんが脚本を担当していた『女ねずみ小僧』(1990年、フジテレビ系)という作品です。ニラ蔵という役でした」