三谷氏はこれまで『新選組!』『真田丸』『鎌倉殿の13人』と3本のNHK大河ドラマの脚本を手掛けている。これまで多くの三谷作品に出演してきた相島さんは、三谷脚本の『新選組!』には新見錦役で出演していたが……。
「そう、ひとつ前の『真田丸』には出ていません。当時いろんな人に、NHKの人にも言われたんですよ。『相島さん、真田丸には出ないんですか?』って(笑)。いやぁ、自分としてはやる気満々なんですけど、みたいな話をしていたけど……。まぁ、とにかくいろいろとめぐり合わせが悪くて『真田丸』には出演できなかった。それがとても悔しかったんだなぁ。
なので、今回は後悔したくないと僕のほうから三谷さんに出してくださいとお願いしたんです。確か、2019年の終わりか、2020年のはじめくらいだったかな。次の大河は三谷幸喜が鎌倉時代を描くということで世間はすでに盛り上がっていました。この大河にどう~しても混ざりたかった。だから三谷さんに電話して『僕を出してくれないか』って、長い付き合いで初めてお願いしました(笑)。
そしたら後日、三谷さんが『あいちゃん、あいちゃん、一ついい役があった』と言うから『えっ、何?』と聞いたら、『うんけい』って。『うんけい?』と聞くと『知ってる?』と(笑)。
運慶は物語の後半からの登場です。僕の撮影初日、三谷さんもスタジオに遊びに来てくれたんですよ。それで、ニコニコ笑いながら『今日の撮影の出来次第でこれからの運慶の出番が決まるからね』って言うの! もう勘弁してください(笑)。彼はそうやって俳優によくハッパをかけます。ちょっと冗談を交えながら。それも俳優たちから慕われるところなんだろうな」
三谷作品のことをよく知る相島さんは、三谷幸喜の描く芝居と映像作品の違いを次のように語る。
「三谷さんは芝居もドラマも映画もやりますよね。芝居は芝居の良さが、映像には映像の良さがある。今回改めて思ったのは、昔よりもドラマのスタッフに多くを委ねているなぁと。台本を渡して、あとはどうぞ上手に料理してくださいって。お互い相手をリスペクトしながら共同作業をしているんだと思いました。
それに対して舞台は三谷さんだけの世界です。自分で書いて、自分で演出する。しかも現場でバンバン変えていく。役者に面白いことを言わせて、思いついたらその場で書き直して」
相島さんはかつて「物書き」を目指そうとしていたこともあった。だが、三谷氏の存在によって大きく変わったという。
「僕は若い頃は役者ではなく、物書きになろうと考えていたんです。でも三谷さんと出会ってすっぱり諦めました。世の中にはこんな面白くて凄い奴がいるんだって。それくらい彼の書くものは出会った当時から面白かった。
僕は15年ほど前にがんを患って死にかけた。こういう体験ってもし物を書く人間だったら言葉は悪いけれど最高においしいネタだと思うんです。でも僕は闘病記などを書いてみようなんて全く思いませんでした。それよりも、生きているうちに好きなことをやろうとバンドや落語をはじめたり、ミュージカルに挑戦したりしました。つまり自分は表現する人なんですね。目の前にいる人を喜ばせることが僕は好きなんだと(病気をして)再確認しました」