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『有吉の壁』総合演出インタビュー「“テレビだから”できることはもうない」「見る価値で勝負」【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】

『SL公園の人選手権』での有吉と佐藤(提供)

『SL公園の人選手権』での有吉と佐藤(提供)

 競争の激しいゴールデンタイムで、いま最もお笑いの純度が高い番組──日テレ『有吉の壁』からは、チョコレートプラネットによる「TT兄弟」、「美炎-BIEN-」、「Mr.パーカーJr.」、ジャングルポケットによる「ストレッチャーズ」など、芸人発のキャラコントが次々と生まれてきた。また、2年連続で番組スピンオフの音楽ライブやミュージカルライブの開催、番組内企画「カベデミー賞」の映画化など、番組の「壁」を越えた動きが際立つ。総合演出・橋本和明氏に、番組外へと次々と仕掛けていく「令和のテレビの作り方」について訊いた(一部敬称略)。

 聞き手は、『1989年のテレビっ子』『芸能界誕生』などの著書があるてれびのスキマ氏。テレビ番組の制作者にインタビューを行なうシリーズの第1回【前後編の後編。前編から読む】。

「僕らが当てようと思って出した瞬間にスベると思います」

『有吉の壁』(日本テレビ系)では、「ブレイク芸人選手権」や「ブレイクアーティスト選手権」などから、TT兄弟、Mr.パーカーJr.、美炎-BIEN-(チョコレートプラネット)やストレッチャーズ(ジャングルポケット)ら数多くのキャラが“ブレイク”を果たした。コアなお笑いファンに刺さるだけではゴールデンタイムでは生き残ることはできない。だから、こうしたブレイクは大きな意味があったに違いない。だが、総合演出の橋本和明は、「まったく狙っていなかった」という。

「あの『ブレイク芸人(アーティスト)選手権』ってスタッフも芸人もみんな思っていると思うんですけど、両方の楽しみ方ができるコーナーなんです。子供から見ると純粋に楽しいけど、大人からみると、腕がある芸人がなんでこんなしょうもないことやってるの?みたいな悲哀を引いた目で楽しむ。普通なら無理矢理やらされるようなことを自らやるっていうのが相当おかしいじゃないですか。

 だから『ブレイク』ってあえて銘打っているのも、『ブレイク』するわけがないと思ってつけたんですよ。やっぱり昔のように狙い撃って当てに行くっていう力はもうテレビにはないと思うんです。そういう時代に、別にヒットするほどのものじゃないですよって感じでやった『壁』のやり方がマッチして、勝手にヒットしたんだと思います。ちょうどTikTokとかYouTubeに好きなものをあげて勝手に誰かがスターになるみたいな時代の産物と呼吸が合ったんじゃないかと。だから僕らが当てようと思って出した瞬間にスベると思います」

 そうしたヒットしたキャラクターを番組に限定させることなく、CMや音楽番組などへの出演を許しているのも特筆すべき点だろう。

「横澤(俊之)というプロデューサーが優秀で『ブレイクアーティスト選手権』も彼がやりたいって言ってできたものなんですけど、キャラが話題になった時に『やっぱり芸人さんが考えたものだから、芸人さんに還元すればいい』って言ったんですよね。美炎-BIEN-を日テレ以外出さないで下さいとか、うちが初出しですよねってやるのってすごいちっちゃい話じゃないですか。テレビの敵はテレビじゃないって言って何年経つんだって。テレビが盛り上がることのほうがいい。そのためには絶対、カセをつけないほうがいいんですよ」

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