最終的な芸人とのコミュニケーションは「編集」で
だから違うグループの芸人たちが組むユニットもスタッフ主導ではなく芸人たち自身に任せている。「自分が面白いと思っている人とやったほうがいい」からと。そうして「芸人ファースト」を貫く一方で、総合演出が持っている強力な武器がある。
「僕が最後に持っているのが、編集権。納得の行かないものは切るという。その一刀があれば充分だと思うんです。情では残さない。芸人さんのためにもならないですから。それが僕と芸人さんとのコミュニケーションだと思っているんです。これは面白い、これは面白くないとジャッジして、こういう編集をしました、と。それをフィードバックして芸人さんたちは次のものを考える。それって極めて健全なプロセスだと思うんです」
今、「テレビだから」できることは「もう別にない」のではないかと橋本は言う。だからこそ「どれだけ価値があるものを作っていると思って、演者もスタッフも作れるか」が大事だと。
「今はいろんな大変なことがいっぱいある中で、何を伝えたいからやるんだろうとか、僕がやりたいことってなんだろうとか、見えなくなっている番組が多くなっている気はします。自戒を込めてですけど。これを見せたいからやる。これには見る価値があると思って作る。それってスゴい純粋だけど、すべてのエンターテイメントの基本。それを忘れずにどれだけ残せるかという勝負のフェーズに来ているんじゃないかと思います」
(了。前編から読む)
【プロフィール】橋本和明(はしもと・かずあき)/1978年生まれ。東京大学大学院修了後、2003年に日本テレビ入社。現在は『有吉ゼミ』、『有吉の壁』、『マツコ会議』を担当。
◆取材・文 てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)など。
『有吉の壁』(日本テレビ系)
毎週水曜よる7時放送。MC有吉弘行が設けた「お笑いの壁」に気鋭のお笑い芸人が体を張ってチャレンジするバラエティ番組。12月21日(水)よる7時から「寅年の壁を越えろ!年末伊豆2時間SP」が放送。MC有吉弘行が選ぶ2022年有吉の壁優勝者も発表。